０日目53 ページ6
「ありがとう、助かった」
「い、いえ！それでは僕たちはこれで失礼します」
「失礼します！」
何故か牛島に声をかけられ狼狽する芝山と最初から最後まで元気いっぱいの灰羽、二人が自校の生徒の集まる席へ去っていくその後姿を眺めて、牛島は首を傾げる。
「今のはアレだろ、お前の圧に気圧されたんだよ」
「圧……？」
平常時でさえ隙のない自身の王者の風格に自覚のない牛島は瀬見のその解説にやはり首を傾げた。
再三、手を鳴らす音に集合、とまるで部活の時のような掛け声が聞こえてくる。ちょうどゴミ箱に紙コップを捨て終えたところだった白鳥沢の面々は、その足で先程の会議の時に座っていたテーブルへと向かった。相変わらず司会進行役は澤村で、他二人よりも適任だからというのは分かるが、わざわざ中立の孤爪でなく共有者を名乗り出た片方である彼が仕切っているのはやはり何か意味があるのではないかと頭に疑念が浮かぶ。そしてその後彼が話した結果はその疑念を裏付けるものであった。
「まず結果から話すが、俺の陣営の共有者はちょうど二人出てきた、一方で月島の方は誰も名乗り出なかった。月島が狂人だった場合のことを鑑みて人狼に知られないように俺の側の共有車の名前は伏せておくが、中立の孤爪もちゃんと確認しているからこの結果は信用してほしい」
その結果報告に一同は今日一番のざわめきを見せる。それは人狼、もしくは狂人、とにかく偽物が分かりついでに本物も確定したということだからだ。当然全員の視線は偽物と思われる人物に向くが、彼はずっと俯いておりその表情は読み取れない。
「そして次に、占い師も今日のうちにさっきの方法で探し出したい。占い師には必ず護衛をつけるから、村人陣営の勝利を望むなら必ず出てきてくれ。とにかく今日は人狼がまだ話し合いをしていないうちに情報を集めるんだ」
まるで推理は明日にもできるとでも言うように澤村はどんどん場を動かしていく、未だ混乱と疑念のさなかにある他の生徒達は誰からともなく先程と同じように円を作り始めた。
「月島と孤爪も、今回はあの輪の中に入ってくれ」
「え？俺は確認する方だけど？」
「ん？」
指示を受ける側はスムーズに進んでいたのだが、耳に入ってきた会話から察するに司会進行側が何やら躓いているようだった。背の高い烏野の眼鏡を掛けた生徒は言われた通り円を作る一人になるが、もう一人の、髪染が落ちかけているプリン頭の生徒の方は共有者の澤村と並んだままである。
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作者名：世界の真ん中で | 作成日時：2023年5月18日 12時
