0日目23 ページ24
白鳥沢に宛てがわれた探索場所は館内図の名称で表するならば、サンルーム、植物園、バルコニー、グラウンド、簡易キッチンの五つであった。他校の割当と比べ少々数が多いように思えるが、バルコニーの敷地にサンルームと植物園が併設されているため面積的にはそう変わらず、また、調べ場所が多いからといって特に不平不満が出るわけでもなかった。そしてなにより、屋外を連想させるこれらの単語にもしかしたら外に出られるのではないかという期待が膨らんでいた。
「なんだよこれ……っ！！」
バルコニーの人工芝の上で瀬見が叫ぶ。目の前には胸の高さほどの柵があり、その後ろには彼らが待ち望んでいた「外」が広がっている。だが彼らのいる位置から見えるのは高層ビルの頭と空ばかりで、下を見下ろしてやっと密集するビル群を確認することが出来る。ここがどこかも、自分たちが一体何階にいるかもわからない。ただ一つ言えるのは、この場所からの脱出は絶望的であるということのみだった。
「おーい！！誰か！！誰か聞こえませんか！！」
柵から身を乗り出さんばかりの勢いでこの中の唯一の一年生である五色が、先程からずっと声を張り上げているが当然反応など返ってこない。そもそも声が届いているかどうかさえ怪しい、むしろ聞こえていない可能性のほうが高いだろう。
「……はぁーーーー……、マジカヨ……」
長い溜息を吐いて天童がその場に座り込む。その隣で外を眺める牛島も、悲嘆を声に出さずとも無意識に柵に置いた手に力がこもり、強く握りしめた拳の内側には綺麗にに手入れされた爪が食い込んだ。その事に気づいた大平が彼の手に自身の掌を重ね、彼の目を見てやんわりと首を振った。それでようやく自身が大切にしてきた左手を傷つけていることに気付いたのか、彼は無言で握っていた拳を開いた。
この柵の外の光景を見るまで大きな期待を抱いていた分、彼らが受けたダメージはひどく大きかった。
「飛ばし方のコツとかは？」
「流石にそこまでは……」
「まあこの高さなら普通に飛ばしても遠くまで行くよな」
背後から二人分の声が聞こえ振り向けば、この場からいつの間にかいなくなっていた山形と川西が何かを手に持ちこちらへ駆け足でやって来た。
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星を廻せ - 中の人です。表紙作りました。人選は完全に我の趣味です。本編などには何も関係ない趣味の人選です。 (2023年3月24日 4時) (
レス) id: 853819a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星を廻せ | 作成日時：2023年3月19日 7時
