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今でも、彼女を貫いた感覚が鮮明にこの手に残っている。今まで生きてきた中で1番暗い色に染まったあの景色を、一生忘れる事はないだろう。
それからずっと、死に物狂いで戦ってきた。どんな辛さも痛みも、あの時の苦しみに敵うもの何て無かった。
鬼無辻無惨
何としてもその男に辿り着いて、この手で殺すと決めた。そうして自分の身も顧みず、ただ戦い抜いていた日々の中、私の世界は、色を取り戻した。
「A?」
『…ごめんなさい。どうしましたか?』
心配そうに私の顔を覗き込んだしのぶさんに笑い掛けると、彼女もまた、優しく微笑んだ。
「今日は風が気持ちいいわね。」
『ええ。何処か出掛けましょうか。』
「前話していた甘味処は如何かしら?」
『いいですね。じゃあ、その前に。』
小さな唇に音を立てて口付けると、ぱちりと瞬きをした彼女が可愛い。
何時もの事なのに未だ慣れず、固まるしのぶさんの手を引くと、しっかりと感じる温もり。
「…Aはズルいわ。」
『くす、何のことでしょう。』
離さない。今度こそ、愛しい人を守り抜いてみせる。
鬼なんて居ない、安全な世界なら、私達はもっと幸せになれる筈だ。
私の腕の中で死んでいった彼女にも、今隣に居てくれるしのぶさんにも、誓う。私が必ず、そんな世界を創ると。
この鮮やかな世界で、愛する人と生きる為に。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (11月12日 17時) (レス) @page22 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - めっちゃ最高です。続きが気になります。更新気長に待ってますので頑張ってください! (2021年9月27日 22時) (レス) @page22 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
儚(プロフ) - 七稀さん» 七稀さん、読んでくださってありがとうございます。ゆるゆると更新していくので、これからもよろしくお願いいたします! (2020年5月17日 2時) (レス) id: 375c81672d (このIDを非表示/違反報告)
七稀(プロフ) - めっちゃ好きです!これからも楽しみにしてます!! (2020年5月16日 21時) (レス) id: e9601a34de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕月 | 作成日時:2020年5月9日 2時