[五章]-3 ページ35
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「……牛鬼さんて、凄い妖怪だったんですね……」
「どういう意味だよ」
牛鬼さんはまた軽快に、ケラケラと笑い出した。私としては感謝を述べたつもりだったが、言ってから煽ってしまっていることに気付いた。牛鬼さんは更に続ける。
「後さ、指南役探してんだろ?俺が修行見てもいいよ」
「え?本当ですか……!?」
「うん。あ、でもとわぽんの方が良かった?」
「とわ…………、っ!?い、いえ!牛鬼さんでお願いします」
"とわぽん"という耳馴染みの無い渾名で呼ばれているのが狐さんだと気付くのは困難ではなく、私は慌てて両手を振る。そして深く頭を下げてお願いすると、何だか牛鬼さんはニヤニヤと笑みを浮かべた。
「ふーん、なるほど……ま、そしたら請け負うわ。週二か週三で」
「(なるほど……?)週二、三かぁ……もっと増やせませんか?」
「俺そんな暇じゃないから!」
「え、暇じゃないんですか」
牛鬼さんの調子に合わせて、軽く冗談を叩いてみた。このひとは人との距離を測るのがとても上手いのだと思う。
暇だけど、と零した牛鬼さんは「でも、」と付け加えた。
「最近"
「怪しい奴ら……?え、ていうか牛鬼さんて何してるんですか」
「特に何も。情報屋紛いのことしてるけど、今回のは俺が個人的に気になってさぁ」
まぁでも修行は見てやれるよ、と安心させる様に笑みを向けてくれた。妖怪だけのことなら、私が気にかける必要は無い……のかな?そうは思うけれど、気になってしまうのは仕方の無いことだった。
牛鬼さんはそんな私の様子に気付いているらしく、唸りつつ後頭部をガシガシと掻いた。
「…………幾らかデカい集団で、神社とか寺の集まるとことか、古い妖怪の住んでるとこの情報を集めてるみたいなんだよね。
んで、流し聞きしてたら、先日とわぽんのとこでコソコソしてる奴見付けたワケ」
「狐さんの所で……?」
「アイツに用あるのなんて昔馴染みの妖怪か、狐かくらいじゃん。人の知り合いもいるっちゃいるけど、それは関係ねえし」
そこまで言うと、牛鬼さんはベンチから立ち上がってぐっと両手を上げて伸びをした。自然とつられて、私も腰を上げる。
「だから、何かあるなって。今まだそれ調べてる最中ー。一応中身知れたらとわぽんにも言うつもりだけど」
ま、神社近くでも目撃あるから気を付けな。
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朝霧(プロフ) - 丸メガネさん» 語彙力が無くなる程とは……有難いお言葉、本当に嬉しいです!しっかり完結させるつもりですので、これからも気中に読んで頂ければ幸いです。有難うございます! (2018年8月17日 11時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ(プロフ) - え、もう好き。語彙力無くなるくらい好きです。お忙しいとは思いますが、どうか更新停止せず完結まで持っていってください。お気に入りに追加してるので通知いつも楽しみにしてます。頑張ってくださいね! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 2b4c29f1fe (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - SAKANAさん» コメント有難うございます、お気に召された様でとても嬉しいです!小説内の進展速度は遅いですが、これからも何卒気長に見守って頂ければと思います……!更新頑張ります! (2018年8月13日 16時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
SAKANA(プロフ) - こういう小説すきです…とても好きです、ありがとうございます…更新頑張ってください陰ながら応援しています… (2018年8月12日 23時) (レス) id: a3a9931e24 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - 咲良さん» 有難うございます、初めてコメントを頂けたので本当に励みになります。これからも何卒宜しくお願いしますね! (2018年8月3日 0時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧 | 作成日時:2018年7月24日 4時