[三章]-2 ページ23
.
「じゃあ、今は仕事が落ち着いたから帰ってきたんだね」
「んーん、違うわ。次のターゲットがこの近くにいるの。……というか、A。あなた最近ちゃんと仕事してないんだって?」
唐突に投げられた言葉に思わず聞き返してしまう。今日も仕事をしてきたばっかりだというのに。
「え……?誰が言ってたの、そんなこと」
「誰でもいいわよ。どうなの?」
姉さんは髪を耳に掛けながら、こちらをじっと見つめてくる。私は思わず眉を顰めた。
「ちゃんとしてるよ」
「でも、依頼を受けておいて祓ってない妖怪がいるでしょう?」
じろりと姉さんに視線を向ける。姉さんは相変わらず、真っ直ぐにこちらを見ていた。
「祓い屋の仕事は祓うことなのに、祓わずに解放したり和解したりって……何を考えてるの?」
「祓わなきゃいけないものはちゃんと祓ってるよ。そうじゃないものは別の方法でだけど……。それでも、依頼はちゃんと達成してるよ」
「何故わざわざ別の方法を使う必要があるの?妖怪は例外無く祓うべき対象であることは、Aもこの仕事を始めたときから知ってるでしょう?」
「……妖怪も人間もそんなに変わらない、と思う」
私がそう言うと、姉さんは目を見開いて絶句した。額を指先で抑え、信じられないという表情を浮かべる。
「それを教えてくれたひとがいる。……人間にいろんな人がいるように、妖怪にもいろんな妖怪がいる。その善悪を見極めて、然るべき対処をすることが私の仕事だと思う」
ご馳走様、と呟いて私は自室へと戻ることにした。
───……
ぼふ、と音を立てて自分の部屋のベッドに体を埋める。
「……そう思ってはいる、んだけどなぁ……」
ぽつり、呟く。先程はああ言ったものの、結局はいつも迷いながらの仕事だった。祓い屋となる時、祖父に『祓い屋は妖怪・悪霊等人に仇成す存在を祓う仕事をすること』と強く叩き込まれたことはよく覚えているし、その教えに沿って私は祓い屋をやってきた。
──狐さんに会うまでは。
妖怪は、そんなに悪い妖怪ばかりじゃないと思った。居酒屋で会った妖怪たちも、人間だとは気付かなかったものの、私に沢山優しくしてくれた。今まで姉さんや祖父が意思疎通を図らなかっただけなんじゃないか。そう考えつつも、一度妖怪にもいろんな妖怪がいると知ってしまった為に、実際に祓うときに出遅れてしまったり迷ってしまったりもする。
どうすればいいのかな。このままでいいのかなぁ。
.
82人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
朝霧(プロフ) - 丸メガネさん» 語彙力が無くなる程とは……有難いお言葉、本当に嬉しいです!しっかり完結させるつもりですので、これからも気中に読んで頂ければ幸いです。有難うございます! (2018年8月17日 11時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ(プロフ) - え、もう好き。語彙力無くなるくらい好きです。お忙しいとは思いますが、どうか更新停止せず完結まで持っていってください。お気に入りに追加してるので通知いつも楽しみにしてます。頑張ってくださいね! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 2b4c29f1fe (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - SAKANAさん» コメント有難うございます、お気に召された様でとても嬉しいです!小説内の進展速度は遅いですが、これからも何卒気長に見守って頂ければと思います……!更新頑張ります! (2018年8月13日 16時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
SAKANA(プロフ) - こういう小説すきです…とても好きです、ありがとうございます…更新頑張ってください陰ながら応援しています… (2018年8月12日 23時) (レス) id: a3a9931e24 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - 咲良さん» 有難うございます、初めてコメントを頂けたので本当に励みになります。これからも何卒宜しくお願いしますね! (2018年8月3日 0時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:朝霧 | 作成日時:2018年7月24日 4時