[二章]-8 ページ21
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───……
「狐さーん……、着いたよー」
「あぁ、そうですか……えー……鍵、は」
「鏡から行ったんだから鍵なんて無いよ。ほら」
あれから幾分かマシになった狐さんを支えつつ、店員さんに帰り方を教えて貰ってゆっくりながら、ちゃんと狐さんの屋敷に帰ってくる事が出来た。
屋敷内の縁側を歩く。大分時間が経ったと思ったが、こちらはまだ夕方だった。
「……どうでしたか、"こっち"は」
すみません、もう大丈夫です、と言って狐さんは私の支える手から離れた。着物を整えつつ問い掛けてきた狐さんの言葉に、庭を眺めて歩きながら、私は居酒屋に居た妖怪達の事を考える。
あの場所は賑やかで、明るくて、楽しげで。幾度と無く人間のようだと思った。私があの場所で感じた『楽しい』という感情は、きっと妖怪達の感じるものと同じだ。
妖怪全ては悪だという偏った考えは少し無くなっている。少なくとも私の世界は広がったのだと思う。そう考えると、人知れず頬が緩んだ。
「悪くなかったよ」
「そうですか」
「……、また、行きたいな」
伺う様にして私がそう零すと、狐さんは微かにいつもより開いた眼鏡の奥の瞳でこちらを一瞥した後、口の端を緩く吊り上げてふっと微笑んだ。
「そのうち、な」
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朝霧(プロフ) - 丸メガネさん» 語彙力が無くなる程とは……有難いお言葉、本当に嬉しいです!しっかり完結させるつもりですので、これからも気中に読んで頂ければ幸いです。有難うございます! (2018年8月17日 11時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
丸メガネ(プロフ) - え、もう好き。語彙力無くなるくらい好きです。お忙しいとは思いますが、どうか更新停止せず完結まで持っていってください。お気に入りに追加してるので通知いつも楽しみにしてます。頑張ってくださいね! (2018年8月16日 23時) (レス) id: 2b4c29f1fe (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - SAKANAさん» コメント有難うございます、お気に召された様でとても嬉しいです!小説内の進展速度は遅いですが、これからも何卒気長に見守って頂ければと思います……!更新頑張ります! (2018年8月13日 16時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
SAKANA(プロフ) - こういう小説すきです…とても好きです、ありがとうございます…更新頑張ってください陰ながら応援しています… (2018年8月12日 23時) (レス) id: a3a9931e24 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧(プロフ) - 咲良さん» 有難うございます、初めてコメントを頂けたので本当に励みになります。これからも何卒宜しくお願いしますね! (2018年8月3日 0時) (レス) id: eaa2cca1e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧 | 作成日時:2018年7月24日 4時