41. どうやったって、もう。 ページ41
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Aは、上手く乙骨と顔を合わせられなかった。
乙骨先輩、怒っているだろうか。私が夏油傑の妹だと、隠して先輩と接していたから。私に幻滅しているかもしれない。もしそうだったとしても、
私に、何かを言う資格なんてない。
「‥‥‥‥実は僕、Aちゃんの名字が夏油だって、知ってたんだ」
「‥‥‥‥え?」
思いもよらなかった乙骨からの言葉に、Aは一瞬ぽかんとして顔を上げた。
乙骨と視線が合う。‥‥‥どうして、どうして先輩。
どうして貴方がそんなに苦しそうな顔をしているの。
「‥‥あの補助監督に聞かされて。‥‥ごめん、気持ちの整理が付かなくて、その‥‥Aちゃんとどうやって接すれば良いのか分からなくなった。本当に、ごめんね。
まずは、そのことを謝らせて欲しい」
‥‥‥そうだったのか。だから、そうか、先輩は。
「‥‥‥それから__」
「‥‥乙骨先輩」
「‥‥え?」
「もうそれ以上‥‥謝らないで下さい。先輩は何も悪くありません。違うんです、先輩。乙骨先輩や先輩方の私への反応は、正しくて、当たり前で、それで。
本当に謝らなきゃいけないのは、私の方なんです」
乙骨にとっても、予期せぬ言葉らしかった。目をぱちぱちと数回瞬きしてから、「‥‥なん、で」と乾いた声が唇から漏れる。
「‥‥‥違う、」
その瞬間、乙骨は必死な表情をしてAに詰め寄り、彼女の肩にぐっと手を置いて声を荒げる。
「‥‥‥違う!そんなこと、‥‥あるわけないじゃないか。君と夏油は別の人間だ。こんなに優しい君が‥‥僕達に謝らなきゃいけないなんて、そんなのおかしいよ、
本当に酷いことをしたのは僕達だ。君は、夏油じゃないのに、僕達は」
「違います。違うんです、先輩」
もう、私という人間に対しては。
「私と‥‥‥夏油傑は違う人間です。そんなの分かりきったことなんです。皆、本当は分かってるんです。
けど、それでも、私は。人殺しの妹だから。どんなに正論を貫いたって、それでも私は世間にとっては人殺しの妹なんです。
皆分かっている。私を忌み嫌うなんて、筋違いだと。
だとしても私とは関わりたくないし、
大切な人を夏油傑に殺されたから私を殺したい程に憎んでいる人もいるし、
私の顔に夏油傑の面影を見る人もいる。」
それって、どうしようもないことだ。
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凛音 - 涙が出てきそうになりましたが頑張ってこらえました、なぜなら目に涙がにじんで文字が見えなくなるからです。頑張ってこらえました、でも結局泣いてしまいました。本当に感動しました! (8月28日 10時) (レス) @page46 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
どこぞのオタク - 良かったです...泣きました......うぅ、是非とも夢主ちゃんには皆から「人殺しの妹」ではなく「夢主ちゃん」としてみて貰って幸せになってほしい...最高でした!! (2023年3月13日 15時) (レス) @page46 id: 625a6655ea (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - ニコ25さん» 最高だなんて言って頂いてッ‥‥本当にご愛読ありがとうございました♡高専で皆で青春してる感じが書きたくて、楽しんで頂けたようで嬉しいです!!! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - メロさん» 本当にご愛読ありがとうございました!!毎度メロさんのコメントに支えられていると言っても過言ではないです!!!二週目なんて嬉しいです‥‥!これからも宜しくお願いしますッ! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ25 - マジで最高でした!!!!!高専の皆のわちゃわちゃ感最高すぎる......(≧∇≦)ありがとうございました!!! (2022年5月31日 23時) (レス) @page45 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほしふる。 | 作成日時:2022年4月2日 19時