37. いつだってこうなった。 ページ37
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乙骨が、「待っ、」と声を上げた。
狗巻が目を見開いた。
真希がピタリと硬直した。
Aが、深々と頭を下げて、動かない。
「‥‥‥‥‥‥‥は‥‥‥‥‥‥‥?」
どういうことだよ、と消え入りそうな声で真希が唇を震わせた。
補助監督が、はぁ、と息を切らせながら動かなくなったAをキッと睨む。乙骨はもう言葉を発せなくなっていた。
「‥‥‥‥知らなかったんですか。まぁ、そりゃ、言いませんよね、はは」
「‥‥だから、知らなかったって何だよ‥‥!!」
「___そこに座ってる一年生は、夏油傑の妹なんですよ」
‥‥乙骨は心の中で、ああ、と言葉を呟く。
こうなった以上、もう、誰にも止められない。
「‥‥‥‥‥Aが‥‥‥‥夏油の、妹‥‥‥‥?」
その時間がAにとっては、凄く長いように感じられた。
Aはゆっくりと顔を上げる。隣に座る真希と目が合う。
彼女の視線は、いつもの、誰かの、Aを夏油傑の妹と分かった時の、あの、
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「お前の兄のせいで‥‥」
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「__‥‥‥‥っ!!」
その瞬間。数秒程の出来事だった。
Aが車内のドアを半ばこじ開けるようにして全開にし、そのまま隣に座っていた狗巻を越えて、車の外に身を投じたのだった。
呆然としていた狗巻は、我に返り慌てて「おかか!!」とAを引き留めようとしたが、その手は虚空を切り。
「っ!!Aちゃん!!!」
乙骨がすぐさま助手席のドアを開けて、ドアの外に身を乗り出すも、時既に遅し。
Aの姿は、車道を越えて街の建物の中に消えていった。
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凛音 - 涙が出てきそうになりましたが頑張ってこらえました、なぜなら目に涙がにじんで文字が見えなくなるからです。頑張ってこらえました、でも結局泣いてしまいました。本当に感動しました! (8月28日 10時) (レス) @page46 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
どこぞのオタク - 良かったです...泣きました......うぅ、是非とも夢主ちゃんには皆から「人殺しの妹」ではなく「夢主ちゃん」としてみて貰って幸せになってほしい...最高でした!! (2023年3月13日 15時) (レス) @page46 id: 625a6655ea (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - ニコ25さん» 最高だなんて言って頂いてッ‥‥本当にご愛読ありがとうございました♡高専で皆で青春してる感じが書きたくて、楽しんで頂けたようで嬉しいです!!! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - メロさん» 本当にご愛読ありがとうございました!!毎度メロさんのコメントに支えられていると言っても過言ではないです!!!二週目なんて嬉しいです‥‥!これからも宜しくお願いしますッ! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ25 - マジで最高でした!!!!!高専の皆のわちゃわちゃ感最高すぎる......(≧∇≦)ありがとうございました!!! (2022年5月31日 23時) (レス) @page45 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほしふる。 | 作成日時:2022年4月2日 19時