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30. ただ笑ってて欲しい。 ページ30

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乙骨は、あれ、とふと足を止めた。


任務へ向かう為に高専を出ようと外の石畳を歩いていたその時、見覚えのある小さな背中が見えたからだった。そうっと近付くと、人影は石の階段に力なく座り込んでいる様子で。


乙骨は優しい声音で声を掛ける。








「Aちゃん」

「‥‥!おっこつ、せんぱ、」








小さな人影___Aがびくりと体を揺らして振り向き、彼女の表情があらわになると乙骨は思わずギョッとした。

Aの瞳からは、ぽろぽろと大粒の涙が溢れていたから。







「えっ‥‥!?Aちゃ、どっ、どうしたの!?さっき伏黒くんと任務行ってたよね‥‥?もしかして、どこか痛いところとかある?怪我してるの?」








乙骨が大いに慌ててAの言葉も待たずに彼女の体を調べようとするので、彼女はぐしぐしと制服の裾で涙を拭って「ちがっ‥‥ちが、うんです」と嗚咽を漏らしながら声を発した。








「‥‥‥私の不注意で‥‥っ、伏黒先輩に、怪我させてしまいました」

「‥‥‥Aちゃん」

「伏黒先輩は、気にしなくていい、って言って下さって‥‥。けどそんな筈なくて、もし、また先輩に怪我させてしまったら、どうしようって‥‥‥っ」








Aは、伏黒の肩につけられた傷を、思い出していた。

切りつけられた傷口からドクドクと赤黒い液体が流れ出していた。あの時、伏黒が自分の名前を叫んで、そして彼女を突き飛ばして。その瞬間に聞いたのは、彼の皮膚が割ける音。









「‥‥‥せんぱい、絶対痛かった筈なのに‥‥‥笑ってて‥‥私の、為に‥‥」








‥‥あぁ。こんなに優しい子にこの世界は似合わないなぁ、と乙骨は思う。

きっとこの先彼女は何度も同じように涙を流して、何度も苦しんで、自分を責めるんだろう。君が悪いわけじゃないのに。呪術師に振りかかる理不尽は、いつだって人の心を持つ人間を襲うから。


こんなに心優しいAちゃん。君が涙を流さずに済むように、僕に出来ることは、あるのかな。

31. 言葉を貰う資格なんて、私には。→←29. てか、ぼふんって。



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凛音 - 涙が出てきそうになりましたが頑張ってこらえました、なぜなら目に涙がにじんで文字が見えなくなるからです。頑張ってこらえました、でも結局泣いてしまいました。本当に感動しました! (8月28日 10時) (レス) @page46 id: 0943923905 (このIDを非表示/違反報告)
どこぞのオタク - 良かったです...泣きました......うぅ、是非とも夢主ちゃんには皆から「人殺しの妹」ではなく「夢主ちゃん」としてみて貰って幸せになってほしい...最高でした!! (2023年3月13日 15時) (レス) @page46 id: 625a6655ea (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - ニコ25さん» 最高だなんて言って頂いてッ‥‥本当にご愛読ありがとうございました♡高専で皆で青春してる感じが書きたくて、楽しんで頂けたようで嬉しいです!!! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ほしふる。(プロフ) - メロさん» 本当にご愛読ありがとうございました!!毎度メロさんのコメントに支えられていると言っても過言ではないです!!!二週目なんて嬉しいです‥‥!これからも宜しくお願いしますッ! (2022年6月4日 7時) (レス) id: c44e5c04c6 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ25 - マジで最高でした!!!!!高専の皆のわちゃわちゃ感最高すぎる......(≧∇≦)ありがとうございました!!! (2022年5月31日 23時) (レス) @page45 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ほしふる。 | 作成日時:2022年4月2日 19時

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