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ヒロイン ページ10

「高菜!」


「どうしたの?狗巻くん」


授業が終わり、寮に戻ろうとしたとき。


「好、き、!」


彼の口から溢れたのは私が欲しかった言葉。


でも、


「っ、ごめん狗巻くん!」


私は背を向け走り出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そう落ち込むなよ〜。まだチャンスなんていくらでもあんだろ?」


パンダに励まされたけど、やはり落ち込む。


好きな人に、期待してたことと真逆のことされたら、


立ち直れない。更に、ヘタレだし。


「すじこぉ…」

 
でもさ、ちょっとだけ。


勘違いかもしれないけど、


顔赤くしてた気がした。


そんなことを思いながら教室に入った。


「高菜ー…、?!」


「おはよう、狗巻くん」


いつもは後ろで一つに結っているきれいな髪がおろされていて、


いつもよりスカートの丈が数センチ短くて、


気のせいか、頬や唇が火照っていて、


いつもより、いい匂いがして、


「〜〜〜っツナマヨ!!!」


抑えきれない感情が言葉として溢れた。


だって、ものすごく可愛くて。


独り占めしたいって思ってしまう自分がいる。









「いくらぁ…」


結局はぐらかされて放課後。


彼女が可愛すぎて、授業なんて頭に入ってこなくて、


微笑む顔がものすごく理性を揺さぶる。


ふとした瞬間の色んな顔も狡くて、


どうにかなりそうだ。


「狗巻くん?まだ残ってたの?」


「ツナツナ」


「…あの、ね。昨日と今日のことなんだけど、」


きっと迷惑だったんだろう。


昨日のあれがすべてを物語っている。


でも彼女が幸せならいいんだ。


笑ってくれるなら。


「あのね!私、少しでも狗巻くんに見合う女の子になりたくて!」


「…しゃけぇ?!」


聞き間違いかな。だって、昨日フラれたし。


「私いつも女の子っぽくなくて、この間パンダくんと狗巻くんが好きな人のタイプ話してるの聞いちゃって、」


パンダと話したくだらない話だ。タイプ話したらすぐにバレたけど。


「少しでも可愛くなりたくて、イメチェンして自信持とうと思ったんだけど、」


あぁ。だめだ。彼女はいつも予想の斜め上をいく。ほんとずるい。


「好、き!」


「わ、私も!」


ほんとかわいい。彼女がお姫様なら、王子様になれてるかな。


そうだといいな。君にしか見えない王子様。

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作者名:ちとせあめ | 作成日時:2021年3月4日 20時

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