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ようやっと到着した電車に乗り込むと、既に座席はスーツを着たサラリーマンや学生で埋まっていた。
私と先輩は壁際に寄り、立つ事になった。
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『あ、生徒手帳拾った時に思ったんですけど…横山先輩の名前って、なんて読むんですか？』
横山「あー、きみたか言うねん。よこやまきみたか」
『きみたか…かっこいいですね、何か』
横山「そうか？(笑)まぁ、あんま名前で呼ばれへんけど」
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扉近くの手摺りに捕まりながら、照れ臭そうに自分の名前を口にする先輩。
先輩、きみたかって言うんだ。
難しい感じの名前だけど、好きだな。
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『…きみたか』
横山「っえ…」
『…え、あっ、あの、ちがっ…』
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先輩の名前の事考えてたら無意識に名前を呟いてしまってた私。
思いがけない出来事に綺麗な白い頬を真っ赤にさせる横山先輩。
我に帰った私は誤魔化す様に言葉を探す。
うぁー、見つかんないし！
すると、電車が傾き 手摺りにつかまってない私の足元が崩れてしまった。
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横山「あっぶな…大丈夫？」
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気付けば私は尻餅を付いていた。
ではなく。
私の腕を掴む大きな手、そのままそちらへ引き寄せられ近くなる距離。
横山先輩が、私の腕を掴んでくれたのだ。
心配そうに眉を下げ、私の表情を伺う先輩の言葉が耳に届かず、
私の意識は掴まれたままの腕と 近くなった距離感だけ。
まるで、その時が一時停止した様な、そんな感覚。
すると、再生された様に私の家の最寄駅に到着するアナウンスが流れた。
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『あ、だっ、大丈夫です！有難う御座いましたっ、お先に失礼します』
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掴まれた手から腕を擦り抜けさせ、赤い顔がばれない様に早口で挨拶を交わす。
そして駅のホームに足を着けた瞬間。
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横山「あ、橋本さん」
『？』
横山「…また明日な」
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照れ臭そうに微笑み、その言葉を告げた瞬間 呆気なく扉は閉まり、電車が動き出した。
色々起こり過ぎて、思考停止しそう。
私はしばらく、その場から動けずにいた。
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作者名：ちゃこ。 | 作成日時：2020年1月5日 2時
