既往は咎めず ページ23
そう言ってAの牢も開ける。
しかしAは俯いたまま動けないでいる。
「行かないの？」
「････････････」
「逃げるの？」
「････････････」
「そうやってまた立ち止まるんだ」
その言葉に反応して思わずオビを見つめる。
オビはやっと見たと言ってニッと笑った。
＊
「白雪？」
名前を呼んでも反応しない。
「まだ無視するの？もう悲しくなってきたなぁ･････････あ、そうだ」
何かを思いついたように不気味に笑い白雪にナイフを向けた。
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街は霧に囲まれていた。
日中より夜の方が霧が濃い。
白雪は霧の中を走っていた。
目的も分からず道も分からない。
ただ走っていた。
「･･････一体どこに行けば･･･！！」
「言ったじゃん。どこにも逃げられないって」
その声を最後に意識が途切れた。
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服の破ける音がする。
少し胸元が見える。
それに対して今自分が何をされているのか実感が湧き冷や汗をかく。
「早く見たいなぁ。君が恐怖に怯える顔」
「･･･なぜこんなことを？」
「やっと喋ったね」
「質問に答えてください！」
するとナイフが白雪の首筋へとのび、細い線が出て血が滲み出る。
「主導権はこっちってことわかんないかな？」
「･･･っ」
「君が憎いんだよ、白雪」
「え？」
「お前はいいよね。殿下と友達ですぐに薬剤師になれた。どうせその肩書きでコネでも使ったんだろ？私は試験に３度落ちた。それでもなんとか合格して宮廷ではなくこんな辺鄙な所に飛ばされて･･･。私は殿下の身がある宮廷でお側に付きたかった！」
そう言ってナイフを持っている手を強く握る。
羨望から憎悪、嫉妬へと変わったその表情に白雪は息を飲んだ。
「･･･だから、殺す。私は君を許さない」
「だからなんだと言うんですか？」
突然の声に驚き白雪を見る。
「殿下は確かに私の知り合いです。ですが私はコネなど一切使っていません。それに３度･･･３年かけていても貴女は諦めなかった･･･。貴女はすごいと思います。だからこんな事はやめ」
「アンタに何がわかる！！」
そう言って振り上げたナイフで白雪は覚悟の上で目を瞑った。
すると扉が開く音がして聞き覚えのある声がした。
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作者名：あるみ | 作成日時：2017年5月31日 21時
