君子は豹変す ページ21
オビが白雪を庇いながら戦っている。
まるで全力を発揮していない様な戦闘をしている。
いや、発揮出来ていない。
Aと戦っていた時より力が出ていない。
その様子を少し遠めより見てAは助けようとするが足が止まる。
そして一つの疑問点にたどり着いた。
今が絶好のチャンスではないか？
霧の中で誰が殺したかも分からない。
もしかしたら盗賊のせいにもなる。
オビも白雪の庇っていて精一杯らしい。
手には針でいつでも首の動脈血を刺せる。
“好機”とは正にこの事。
だけど･･･。
Aはその場から動けずにいた。
＊
「お嬢さん！」
白雪の後ろから男が斬りかかっていた。
彼女を庇おうとオビが白雪を押し男を倒すが背中を斬り付けられて苦い顔をする。
「オビ！」
「来るな！」
何人も何人突っかかってきて再び攻撃をする。
しかし白雪を中心に囲いこまれた。
その時、見知った女が男達を一気に倒した。
「A･･･！」
「へえ」
オビがニヤリと笑い二人は背を向かい合わせに盗賊を睨みつけた。
「さあ」
「始めようか」
そう言って二人は多人数を倒していく。
オビもAのいなかった時より生き生きしている。
「大丈夫ですか？さっきの傷、痛いのでは？」
「へぇ、心配してくれてるんだ？嬉しいな」
笑顔で皮肉を言ったつもりが再び笑顔を向けられる。
すると両腕を掴まれる。
さすがに強いAでも男の力には負ける。
刀を頬にぺたぺたと当てて少し切れて赤い液体が一筋零れる。
「おい！こいつがどうなってもいいのか！？」
オビはその光景を見て動きが止まる。
盗賊達は口角を上げてオビを殴った。
「オビ！」
「白雪！逃げて！」
「A！でも･･･！」
「早くして！」
必死に叫ぶAに白雪は一心不乱に走り出す。
「早く追いかけろ！」
「･･･げて」
盗賊にも追いつかれないように早く逃げて。
誰にも捕まらないように逃げて。
逃げて。
お願いだから･･･。
死なないで･････････。
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作者名：あるみ | 作成日時：2017年5月31日 21時
