隣の家の坂本さん-彼と私の30日-

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「A！大丈夫やった！？」

『イケメンと出会った』

「は！？」

『グッチ好き』

「…坂口さん…」

『イケメンというかなんていうか、とにかく好き』





Aの目が本気や、これは坂口さんに惚れたやつ。谷内くんとイチャイチャするよりかはましか、なんて言ったら谷内くん怒るやろうか。





『じゃあ、そろそろ行くね、てつ』

「おん、気いつけてな」

『応援、してるからね』

「ありがとう」





なんやかんやAは優しい。俺よりだいぶ背低いのに、背伸びして頭ぽんぽんするとことかほんまかわええなって思う。





『じゃあね、』





ああ、いつになったら俺の気持ち届くんやろうな。届いたらAは困るんやろうけど。ギクシャクするくらいなら、俺はずっとこのままでええと思ってる。





「哲人、」

「あ、慎吾さん」

「重症やな、お前も」

「ほんまですね…」





俺がAのことが好きだということは、スワローズの選手や監督コーチやトレーナー、全員と言っていいほど知っている。





「気持ち、伝えないん？」

「…何度も言ってますけど…」

「ギクシャクするくらいならええ、か」
「、そうっす」





Aのそばに居れないなら、今のままの関係が一番居心地がいい。俺には無理や、Aを失うなんていうことは。





「ま、哲人がええならええけどな」

「…俺のもんになってくれたらそれはそれで結果オーライやけど」

「幸せにする覚悟はあるん？」

「あります、」

「それなら、そのままの気持ち伝えてもええと思うけどな」

「……そすかね」

「ま、ほらほら行くぞー」





結局俺は、弱い奴なんや。



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