隣の家の坂本さん-彼と私の30日-

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『もしもし？』

「あ、A？」

『勇人さん、』

「おん、寝てた？」

『ううん、起きてたで』

「そっか」





ごめんなこんな時間に、と謝る勇人さんの声がとっても優しくて。なんでだろう、どきりとした。





「今何してたん？」

『え、あ、テレビ見てた』

「何か面白いのやっとる？」

『ううん、スポーツニュース見とった。今日も勝ったんやな、おめでとう』

「おん、智之が投げ切ってくれたわ」

『とも…ああ、菅野さん』

「お、少しずつ覚えてきたなー」

『うん、何となく、あとは小林さんとか村田さんとか』

「すごいやん、」

『へへ、そうやろ？』





ゆったりゆったり、いつも２人で座るソファの上で寝っ転がる。やっぱこのソファ気持ちいい。





『ねえ、またドーム行ってもええ？』

「いつでも来てええで、」

『ほんま？』

「亀井さんも長さんも喜ぶで、」

『亀井さんも長野さんも好き』

「はは、」

『２人は元気？』

「元気やで」

『そっか、』

「なあ、A？」

『ん？』

「なんかな？ここ最近、Aが居るのが普通やったやろ？」

『うん？』

「やから、なんかA居らんのが変な感じ」

『ふふ、あたしも』

「これが普通やったのにな、」





電話の向こうの勇人さんは、きっと笑ってくれて居る。想像できてしまうあたり、あたしはきっと少しずつ勇人さんに惹かれて居ると感じた。





『ねえ勇人さん、』

「ん？」

『帰ってくる日は何が食べたい？』

「なんでもええ、Aの得意料理」

『得意料理？なんやろ、』

「はは、考えといて」

『んーわかった、』

「じゃあ、そろそろ切るな？ありがとう、」

『ううん、こちらこそ』





頑張ってね、と電話を切った。小さくついたため息が、やけに大きな部屋に響いた。



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