隣の家の坂本さん-彼と私の30日-

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「ただいま」

『てつお帰り』





合鍵を持っているAはすでに俺の家へと来ていた。ご飯を準備してくれていて、にこにこ俺を出迎えてくれた。





「お、美味そう！」

『あんな？ちょっと試しで作ってみたんやけど、見た目はバッチリやな。でも味の保証はせんで？』

「Aに殺されるなら本望やわ」

『どういうことやねん、てか死にはせんやろ』

「はは、せやな」

『体にいいんやって、慎吾さんの奥さんとかも作ってるらしくて』

「へえ、そうなんや聞いたん？」

『おん、そうやで、ほれ手洗っといで』

「おん、」





母ちゃんみたいやな、と思いながら嬉しいのは間違いない。いつもこうして俺の体のことも気にかけてくれる。奥さんみたい。





「ん、うまっ！」

『ほんま？見掛け倒しやなくて良かった』

「ほんまAは料理上手やな」

『てつのおかげやで、いつも美味しいって食べてくれるから』

「いや、Aの料理ほんま美味いんやもん」

『ふは、ありがとう、なんか照れるな』

「なあA？」

『ん？』

「……ううん、なんでもあらへんわ」

『なんやそれ、』





変なてつ、と笑われた。何が変やねん、と怒るとごめんとまた笑った。こうやって、ずっと隣で、Aの笑顔を見てたいねん。





「うま、ほんま美味い」

『良かった』





なあ、好きやって言ったら、Aはどうする？





『じゃあ、また来るな』

「おん、マンションの修理終わったらまた行くわ」

『ん、わかった』





なんて、





『ごめんな、ありがとうタクシー』

「心配やからええねん、」

『じゃあ、おやすみ』

「おやすみ」





俺は結局弱虫やから、言えないんやけど。



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