たくさんの愛に包まれて２ (ページ26)

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大人なあなたと、ページ26

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『もしもし、』

「A？今何してる？」

『今？勉強、』

あれから、ヒサと付き合ってから約１ヶ月が経った。

あれ以来勇人から連絡が来ることもなく、平和な日々が続いている。

「まだ大学？」

『ううん、今カフェでまったり勉強中だった』

「そっか、邪魔してごめんね？」

『全然、丁度帰ろうと思ってたから』

「こっち雨で中止、練習終わったから暇になっちゃって」

『今日は甲子園だったよね？』

「うん、そう」

聞こえる？とヒサの声が遠くなると同時に雨の音が大きく聞こえた。

野外球場は雨降ったら出来ないもんね。

『どこか行かないの？』

「そう思ったんだけど雨だから出たくない」

『えー？』

「Aは雨でも外出る派？」

『野球のためなら』

「はは、ほんっと野球ばっかり」

『へへ、』

「まあ、そんなとこがまた可愛いんだけど」

『今度は遠征もしようかなーって、』

「ええ？大丈夫？」

『だって今しか出来ないんだよ？』

「そうだね、仕事始めちゃったら中々出来ないもんね」

『やっぱ今のうちに、沢山ヒサ見たいなあって』

「……ふふ、」

『ねえ、帰って来たらね、行きたいところあるんだ』

「お、Aからそう言ってくるの初めてだね」

『…そうだっけ？』

「うん、」

嬉しいよ、と電話の向こうでヒサがクスクス笑っている。

ヒサの笑い声が何だか心地いい。

「やっと、慣れてくれたのかな」

『え？』

「ううん、何でもないよ」

『何？』

「いや、もっと甘えてくれた方が嬉しいよってこと」

『…だって、ヒサは大人だから』

「大人？そうでもないよ」

『でも、あたしにはすごく大人に見える』

「大人になろうとしないで」

『…何で？』

「今のままのAが好きだから、」

『っ』

「遠慮しないでよ、」

『…へへ、うんっ』

「じゃあ勉強の邪魔になるから切るね、」

『邪魔じゃないのに、』

「はは、いーの、勉強しなさい」

『…はーい』

「じゃあまた明日電話するね、」

『うん、じゃあね』

相変わらずあたしから電話したことはない、

待っててって言われたから。

ヒサはいつも、優しいから。

そんなところに、

きっと惹かれつつあるんだ。

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