たくさんの愛に包まれて

嬉しいようで、何だか寂しい ページ37

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『うわあ…えぐ、』





長野さんの打率がえぐい。５割超えなんて言葉も出ないや。

都市対抗野球は大学サボって全部見に来ていた。だって本当に長野さんは今年で都市対抗野球は最後だから。

このままMVP取ってしまうんではないかってくらいえぐい。





「A、」

『長野さん！』

「ありがと、見に来てくれて」

『決勝進出、おめでとうございます』

「うん、」





スタンドからあたしを見上げて、ニコニコ笑う長野さんはキラキラ輝いている。

来年は、ここで、ジャイアンツのユニフォームを着て、また同じようにキラキラしているんだろうな。





『……』





嬉しいけど、なんだか寂しい気もする。

こんなにもずっとそばにいたのに、一気に遠くに行ってしまうようで。





「A？」

『え、あ、すいません』

「疲れてる？」

『大丈夫です！今日もかっこよかった！』

「ふふ、ありがとう」

『また、決勝の時に来ます』

「Aのために、優勝するから」

「チームのためにもな、」

「いて」

「Aちゃん決勝の時もこいつの応援頼むな」

『ふふ、はーい』





長野さんのチームメイトが長野さんの頭を小突く。

あたしに手を振ったその人は、ベンチの方へと戻っていった。





『じゃあ、あたし帰りますね』

「待って、一緒に帰ろ」

『は、だって長野さんそのまま帰った方が…』

「いーからいーから、」待ってて！





終始笑ったまま長野さんはベンチへ消えた。



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