たくさんの愛に包まれて

カメラ女子発動 ページ36

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『…あ、』





笑ってる、とファインダー越しの長野さんを見つめた。

ついカシャりとシャッターを押すと素敵な笑顔で笑っている長野さんの顔。



最近カメラに興味を持ち始めて

貯金をちょっとだけ崩して購入してしまった。





『……かっこいいなあ、』





気づかぬうちにシャッターを何度も押している。

笑顔の長野さん、真面目な表情の長野さん、試合中の長野さん、ヒットを打ってドヤ顔の長野さん、いろんな長野さんがカメラに収められていく。



たまにこっちに気づいたら顔を隠すんだ、

可愛いでしょ？





「ねえ見せてよ写真、」

『えー嫌ですよ、下手だもん』

「いいじゃん、別にプロな訳じゃないし」

『まあ、ね』

「Aがどんな写真撮ってるか見たい」

『全部長野さんです、』

「嘘だ、俺以外にもカメラ向けてるもん」

『…バレてる、』

「バレバレ、」

『ふふ、じゃあどうぞ』

「ありがとう、」





夏風がベンチに座るあたしたちの間を吹き抜ける。

生温い風だけど心地悪くないのは隣に長野さんが居るからだって感じている。





「へえ…俺こんな顔するんだ」

『かっこいいですよ、』

「そう？ありがとう、」

『これ、あたしすごい好きでこの感じ』

「どういうところ？」

『振り切った所より、この丁度腕が伸びきった感じのが好きで』

「えー細かっ」

『オタクですから、』

「はは、そうだねAは野球オタクだよね」

『いいんです、好きだから』

「都市対抗はこれ持ってきちゃダメだよ、」

『え！？なんで！？』

「試合ちゃんと見て欲しいから」

『見てますよ！ちゃんと見てる！』

「ほんと？」

『ほんとです！！』

「ほんとかなあ、」

『長野さん最後の都市対抗野球ですよ！？撮らずにはいられません！』





来年からはジャイアンツの一員の予定だ。だから来年から都市対抗野球に出ることもない。

だから今年で最後。





「じゃあ、俺以外撮るの禁止」

『へ、』

「俺だけ見てて、」

『…わかりました、』

「絶対、優勝するから」

『っはい！』





いつも長野さんしか見てないっていうのは内緒にしとこう。



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