薬指の秘め事 (２)

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「嘘だろ…、」





あれから数日。まだAは目を覚ましていない。チームは今日札幌に戻ってきて、明日から１週間ホームで試合だ。





「…A、っ」

「…まだ、目覚まさないっす、」





卓さんがお見舞いに来てくれた。信じられない、といったような顔でAを見つめている。そりゃそうだ、数日前までは普通に話してた人。





「…遥輝、お前ちゃんと寝てる、？」

「寝てますよ、家に帰って」





この数日は、Aの様子を見に来ていたから、試合にはもちろん出ていない。抹消はされていないけど、ベンチ登録もされていなかった。その間は寮の方に行ってトレーニング。





「心配…だな、」

「…でも、考えすぎても、Aが目を覚ますわけでもないんで」





俺は信じて待つことしかできない。





−札幌に戻ったらちゃんと話す−

−信じるね、ハルくんのこと−





札幌に戻ったら、ちゃんと話すって言ったのに。信じてくれるって言ったのに。ああ、こういうことになるなら埼玉まで連れて行くんだった。ってタラレバなことばっかり。





「遥輝、」

「はい？」

「無理、すんなよ、俺にも頼って」

「ありがとうございます卓さん」





ぽん、と背中を叩かれて安心した。卓さんが笑ってくれると、俺はすごく勇気が出るんだ。卓さんって、俺の精神安定剤。





「ちょっと、トイレ行ってきます」

「おん、」





泣きそうやから、隠しに行ってくるな。



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