薬指の秘め事

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「…そういうこと、」

「はい、」

「…でも…Aちゃん、それでいいの？」

『え？』





淡々とハルくんと喋っていた中島さんは、突然あたしに話を向けて来た。突然すぎて頭が真っ白になってしまったのだけど、あたしの答えは１つで。





『あたしは…協力したいと思ったので、』

「話してても、Aはいい子っす、」

「そういう意味やなくて、」

『、？』

「Aちゃんは、好きでもない相手と結婚していいのってこと、」

『…え、』

「この先、もし好きな人ができたら、どうするん？」

「…」

「契約でも、結婚は結婚やろ？すぐ離婚する？離婚しても、いろいろあるやろ？」





中島さんは、あたしの心配をしてくれた。心配そうにあたしの顔を見て、心配そうにもう一度どうするん？と聞いて来た。





『…好きな人ができることなんて、無いと思います』

「、え？」

『今まで、好きとか嫌いとか、出会いとか別れとか、そういうのが面倒で人付き合いなんてほとんどしてこなかった、』

「…」

『人を好きになったこともない、だからといって嫌いと思った人もいない…あたしはそういう人間です、』

「そっか、」

『それに今回は…あたしも借りがあるというか…、』

「はは、まだ言ってる」

「借り？」

『彼の車に…傷をつけました、』

「ちーーーーさい傷っすけどね」





わはは、と笑ったハルくんを見て、あたしも少し笑った。何となく、この人となら、一緒に居られると思ったんだ。





『だから…』

「…Aちゃんがいいなら、俺はいいと思う」

「卓さんには、ちゃんと話しておきたくて」

「そっか…さんきゅ、」

「だから、誰にも言わんでくださいね」

「おん、わかった」





一応、おめでとう。笑った中島さんは、なんだか可愛かった。



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