まことの恋 (ページ25)

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ｰ慎side

秋夜「んで、今日はどうした？」

慎「…Aさんに慎くんの気持ちには答えられないって言われた。
…誰かを好きになったりしないって決めたからって。」

秋夜「…それ、姉貴が言ったの？」

慎「うん。
…秋夜、何か知ってる？」

秋夜「…んー、まぁ知ってるっちゃ知ってる、けど…。」

慎「何？」

そう聞くと、秋夜は少しだけ顔を歪めた。

慎「…秋夜？」

秋夜「…慎はさ、なんで姉貴な訳？」

慎「え？」

秋夜「正直慎だったら姉貴じゃなくてもいい女いるでしょ。」

慎「…理由なんてないよ、一目惚れだもん。
それに秋夜のお姉ちゃんだから結構会ってたし。」

…多分、知らないうちにAさんが俺の理想になっていたんだと思う。

綺麗で、大人っぽくて、頭のいいAさんが。

慎「…上京したときにさ、もしかしたらAさんに会えるかもって期待して、でも全然会えなくて。
そりゃそうだよなって思ってたのに…。」

だけど、会えた。

慎「…あれ、運命だと思っちゃダメなのかな…。」

膝を抱えて鼻先をうずめると、秋夜がぽつりと言った。

秋夜「…姉貴が大学行くのと同じタイミングでさ、俺の家族も引っ越したじゃん。」

慎「…うん。」

秋夜「…何でか覚えてる？」

慎「え？
Aさんと一緒に住むからでしょ？」

秋夜「…ごめん、あれ、嘘。」

慎「…え？」

秋夜「…離婚したんだ、うちの親。」

慎「…！」

秋夜「親父はさっさと再婚して、母さんも引っ越した1年後くらいに男作って出て行った。
それからずっと姉貴と二人暮しだった。
親父が養育費出してくれてたけど、たまに滞ることもあったから、姉貴が大学行きながらバイトして。
俺中学出たら働くって言ったけど、大学ちゃんと行けって怒られた。」

慎「…なんで言ってくれなかったんだよ…。」

秋夜「…言えるわけないだろ。」

そう言って俺を見た秋夜の目は、苦悩に満ちていた。