仕事納め ページ11
…
取引先をはしごして、毎年恒例年の瀬のご挨拶が続く。
「口ぱっさぱさ…もう喋れない…。」
「はい、もうすぐ次のところに着くからねー。頑張れ。」
「A厳しくない?中島にもそんな感じなの?」
助手席でネクタイを緩めた風磨くんが不満そう。
「内緒。教えない。」
「あっそ。それはラブラブってことでいいんですね。」
ラブラブっていうベタな言葉を使って私を黙らせるのは風磨くんらしいやり方。
「そっかー。で、今日は中島んとこ行くの?」
「うん、そのつもり。」
「俺も行こっかな。」
「なんでよ。」
「暇なの知ってるくせに。」
あ、彼女が明日まで仕事だから明後日にしか会えないって言ってたっけ。
遠距離って大変そう。早く仕事が終わってもすぐに会えるわけじゃないんだよね。
「弟とゲームでもやるかなぁ。」
「負けたりして。」
「んなわけねぇだろ。」
「はい、ネクタイ締めて。」
「へーい。」
ちょっときつめのスケジュール組んでしまったから、お昼はちょっと高めの和食のお店でランチを頼んだ。
「このランチ超うまい。最高。」
「おいしいね、来て良かったぁ。」
お魚も煮物もホントにおいしい。夜はとてもこれない価格のお店だけど、ランチはそうでもないし。
４月から頑張ってくれた風磨くんに、私からささやかなプレゼントのつもりで。
お会計の時にそう告げると、風磨くんはちょっと照れながら、ありがとうって言ってくれた。
コインパーキングまでの道のりを、二人で歩く。
「A、改めて先輩なんだなって思った。」
「いつも頼りない?」
「そんなんじゃないって。なんにも分かんない俺にここまで教えてくれたのAだよ。ありがと。」
優しい声。
いつもと全然違うの。
向けられる目が優しくて。嬉しくなって私も笑顔になる。
人に教えるということは、自分が理解してないとできないんだと私の方が教えてもらったから。
「風磨くんのおかげで、私も仕事のことちゃんと理解できてるか見直すことができたの。だから、私もありがとうって思ってる。」
「…辞める人の挨拶みたいじゃん。」
「辞めないよ。何言ってんのよ。」
風磨くんが茶化すから。結局、いつものペースになって。
「午後も頑張ろっか。明日から休みだもんね。」
「あ、キー貸して。俺運転する。」
「ありがとう。」
風磨くんがいてくれて良かった。
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みち(プロフ) - Blauさん» コメントありがとうございます。やっと、二人が会うきっかけができました。傷つくのって、本当に怖いものですよね。 (2017年12月7日 8時) (
レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - あこさん» コメントありがとうございます！健人くん側の出来事を知らない主人公の動揺を書きました。これからもよろしくお願いします。 (2017年12月6日 8時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
Blau(プロフ) - 好きだからこそ傷付くのが怖いですね…早く二人がちゃんと本当のこと話せますように（ ; ; ）今日も更新ありがとうございます！癒しです！ (2017年12月5日 20時) (レス) id: 32a363d169 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 続きが気になる！楽しみに待ちますね！ (2017年12月5日 15時) (レス) id: b6d97b5401 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - やすゆきさん» コメントありがとうございます！書きためていたところにたどり着いたので怒濤の更新させていただきました(笑)どうぞ、よろしくお願いします。 (2017年12月4日 16時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みち
| 作成日時：2017年10月28日 19時
