月の雫４(K.Nakajima)

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…



「Aはもうちょっとゆっくりしてきなよ。」


「んー、これ飲んだら戻るね。」


「まぁまぁ、そう言わず。」




いたずらっぽく笑うと休憩室の電話の受話器を取って。どこかにかけ始めた。




「…あ、中島くん?お疲れさまです。もし良かったら、今休憩室でAとお茶してるから中島くんもどうかなって。うん、じゃあね。」




何が起こったのか理解できてない私を置いて、急ぎ足で聖子が部屋を出ていった。

そこから2分くらいたった頃。
ガチャッと大きめの音がしてドアが開いて。




「あっ、Aだけだ。」



無邪気な笑顔の健人が、顔をのぞかせてる。



「お疲れさま…。」


「お疲れさま、大丈夫?」


「え?」


「ちょっと、疲れた顔してる。」



向かいの席に座った健人が心配そうに頬に手を伸ばしてくる。

触れたところが、一瞬で熱くなって。
目も合わせられなくなる私とは裏腹に、健人は口元に笑みを浮かべてる。



ここは、会社の休憩室。



いくら隠してないとは言っても、こんなところ見られたらどうするの?って。

言いたいけど、言葉にならない。




「…それ、どうしたの?」




健人の視線の先には、風磨くんがくれたマカロン。




「風磨くんがくれたの。ホワイトデーのお返し、って。」


「ふーん…。」




興味無さそうだけど、ものすごく気にしてるのが伝わってくる。




「義理チョコあげなかったんだけど、私以外の営業の人はみんな渡してたみたいで。私にも、お返しくれたの…。」


「そうなんだ。ね、キャンディどれが気に入った?」




明らかに話題を変えてく、分かりやすい彼。自分から聞いたのに、もう風磨くんの話聞きたくないんだよね。


どれだけ、妬いてくれるの?


私が嬉しくなるの分かってて言ってる…?

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