記憶(R.Miyadate) (ページ8)

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(R.side)

家に帰ると、

「ご苦労様でした。」

母上が労ってくれたが。
俺には聞かなくてはならないことがあった。

「俺の縁談はどうなったのですか。」

「…涼太、もうあの方のことは忘れなさい。やはりきちんとした家柄の方を迎えた方が。」

「忘れることより、何があったのかを話していただかなくては納得ができません。」

「涼太。」

「はい。」

「あの方とはご縁がなかった、それだけのことです。」

Aちゃんのこと、はなから気に入らなかったのかもしれない。照が間に入ってまとめようとしてくれたけど。
旗本は、旗本の娘と一緒になるしか許されない宿命なのだろうか。

「そんなことより新しい縁談が来てますよ、涼太。」

「…っ、そんなの受けると思いますかっ？お断りしてください。」

悔しくて、仕方なくて。
照のところに行った。

道場で汗を流していた照を呼ぶと、手拭いで汗を拭きながら出てきてくれた。

「痩せたな、涼太。」

「あぁ、結構過酷だったよ。それより、聞きたいことがある。」

「…Aちゃんのことか。」

「なんで俺に黙ってた？」

「すまん、俺が知ったときにはもう庄屋にはいられなくなるところで。宮舘の家に身を寄せたらどうだと提案したら、涼太の母上にしかられてしまって。」

やはり、そうか。
気に入らない娘を、まだ結納も交わしていないのに守るはずがない。
気位の高い母のやりそうなことだ。

「それで、どこへ行ったんだ？」

「…。」

「照？」

「不確かなことを俺の口からは言えない。」

じっとどこかを見据えて口をつぐむ照は、どこかつらそうで。
そんな顔を見たらさすがに俺もそれ以上追求することはできなかった。

「ただこれだけは言える。Aちゃんは涼太の帰りを待ってた。早く帰って来てくれたらって、ずっと言ってたんだ。心配をかけるから文は出さないって。いい子だな、ホントに。」

それならなぜ。
ずっとここで俺の帰りを待っていてくれなかったんだ。

待てない何かが、あったのか？

それとも。

宮舘の誰かに何か言われて去ってしまったのか。

それから数ヶ月。俺は北に似た女がいると聞けば駆けつけ。東にいると聞けば駆けつけて探したが、どれも全くの別人だった。

なんの手がかりもないまま、時間だけが過ぎていった。