記憶(R.Miyadate) (ページ18)

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…

“愛している”

私の耳に残っている。

それは。

この時代に生まれる前から涼太がくれた、身体中を埋め尽くすほどの愛だった。

名前のとおり、涼しげな目元。
芯のしっかりした性格で。武士みたいだねなんて言ったこともあったっけ。

ねぇ。
私は、あなたからあんなにたくさんの愛をもらって生きていたのね。

涙が止まらなかった。

「…、A…？」

泣き続ける私のせいで目覚めてしまった彼は、目を大きく見開くと。

「もしかして…記憶…。」

「りょ、う、た…。」

「そっ、か。思い出したんだね…。」

彼は頭を撫でながら、愛している、と呟いて。私の涙が止まるまでぎゅっと抱き締めてくれていた。

「夢を見てたのかと思ったんだけど、」

「うん。それ、前世の記憶だよ。俺達は幕末に生きてた。」

思い出したことを全て話すと、涼太はさらっと言ってのけた。

「なんで、涼太そんなに普通なの？」

「だって俺生まれたときから記憶あるから。」

「え？」

「記憶を持ったまま生まれてきたんだ、俺。」

どういうこと。
記憶を持ったままって。

わけ分からない私に、無理もないよねと小さく笑うと。彼はスマホを手に取って誰かにLINEを送っていた。

「さて。何から話そうか。今日はAとずっと一緒にいることにしたから時間はたっぷりあるよ。」

「え？海は？」

「やめた。こんなお前を置いていくような人だと思う？やっと思い出してくれたのに。」

涼太。
なんだかとても嬉しそう。

時々、憂いを帯びていた彼は今、無邪気な少年の顔をしている。

もしかして。

私が思い出すのをずっと待ってくれていたの…？何年も？