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…
「健人はすごいね。」
「ありがとっ!ねぇ、A帰ってきたばっかり?なんか食べに行く?」
「うん、じゃあちょっと着替えるね。」
「うん、ちゃんと見てるから。」
「ダメ!私キッチンで着替えるから。」
むぅ、ってむくれる健人を置いて。ドアを閉めてキッチンで着替え始める。
どこに行こうかな、カフェもいいし和食もいいかな。健人お肉好きだし、いつものお店に行くのもいいなぁ。
着替え終わって、ブラウスを洗濯機に入れて部屋に戻ると、一瞬で空気が張りつめてるのが分かった。
「A…。これ。」
「あっ。」
健人が私の方に見せてくる、それは。さっき片付け忘れたお見合い写真。
お見合いとは一言も書いてないけど、こんなの見たら瞬間的に悟ってしまうはず。
「…この人誰?お見合いする気なの?今度実家に帰るって言ってたのはそのため?」
ぐっと肩を捕まれて、動けない。男の人の力って、こんなに強いんだ。
「しない、つもりだけど…、」
「はぁ?つもりって何?」
「親が無理矢理送ってきたの。」
「それならいらないよね?」
そう吐き捨てるように言うと、目の前で大胆に写真と書類を破り捨てた。…これは夢?
「俺以外の人との未来なんて考えなくていいから。」
健人…。
嬉しいけど、あなたに今すぐ将来の選択をを迫るような我が儘は言えない。
「孫の顔が見たいって、言われるの。今度28になるし、健人は4月から新しい出会いもあるでしょ?だから、」
「意味が分からない。ねぇ、そういうことで結婚ってするの?孫の顔を見せるための結婚ってなにそれ。」
…そんな結婚望んでいない。
でも。
アラサーの彼女が重荷になる日が、来るんじゃないかって。思ってしまうんだよ。
健人の真っ直ぐな視線が痛い。
「勘弁してよ…。」
「ごめん。」
「今日は帰る。追いかけてきてもムダだからね!」
バタンとドアが閉まって。足音が遠くなっていく。
私が悪いの。わかってる。
せっかく健人、来てくれたのに。
健人とずっと一緒にいたいのに、素直になれなくてごめんなさい。
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みち(プロフ) - あやさん» あたたかいコメント、本当にありがとうございます。私の大好きな健人くんを書こうと振り切って書いた作品です。やりすぎたかな?と思った日々もありましたが、大切に思っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 (2021年3月24日 23時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
あや - はじめてこの作品を読んでから何年経った今でも読みに来ちゃいます笑 ドロ刑の斑目くんで健人くんに落ちた人としては、この作品ほんとに好きで大好きすぎて……こんなに好きな作品を書いて下さってありがとうございます。これからもこの作品を愛し続けます。笑 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 9ef94419b6 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - くまさん» コメントありがとうございます。嬉しいです!いつも読ませていただいてます!ただひたすらワンコのような健人くんを書きたくて作りました。くまさんに褒めていただけて、より頑張れます。 (2018年10月5日 9時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - みちさんの書かれるケンティーは最高に可愛くて大好きです!これからも頑張ってください! (2018年10月5日 3時) (レス) id: 88d6776288 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - はいはいさん» コメントありがとうございます。更新を待っていただけるなんて本当に嬉しいです。これからも短編集のように書いていこうと思ってます。よろしくお願いします。 (2018年9月27日 17時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みち | 作成日時:2018年9月9日 11時