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…
その時、誰かの足音がして、
「Aさん、いいですか?」
「…はい。」
優しい中島くんの声に、また泣きそうになるなら。壁側に顔を向けて、涙を必死にがまんしてると。
「これ、食べてください。」
差し出されたのは、カントリーマアムが1つ入った小さい袋。
「涙が止まったら、これ。で、お腹が空いたらこれ。」
私の手のひらに、1つ、また1つ、と置いていく。
「あり、がとう。」
メイクも崩れちゃってるなきっと。ひどい顔してそう。
でも、彼の優しさが嬉しくて。ちょっとだけ笑えた。
「俺、今急ぎの仕事がないんで手伝います。だから、そんな泣かないでください。かわいい顔が台無しですよ?」
相変わらず中島くんは甘い。
誰にでもこんなふうに言ってるんだろうけど。不思議だね。甘いものをもらったら、涙って止まってく。
「いいよ、私のミスだし。」
「いや、手伝えることをなんでもするのがバイトでしょ。課長の許可もらいましたから。」
「え?もう?」
「はい。だから、今日はAさんの専属になりますよ。」
「ありがとう…。」
「重さ測るやつ、他の課で借りてきますね。」
「あ、私が…。」
「Aさんはそれ1つ食べて、メイク直してくれたらオッケーです。」
じゃ、と言って。無邪気にピースなんかして。
スタスタと廊下を歩いてく音がする。
メイク直せって、生意気だな…いや、違う、優しさなんだ。他の課に行かなくてもいいように、気を使ってくれてるんだな。
「さて、始めますか。」
「やりますか。」
マスクして手袋して。うちの社の大袋に、小袋を次々と開けて入れていく。
でも。
途中で別件の電話はかかってくるし、あっという間にお昼になってしまった。
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みち(プロフ) - あやさん» あたたかいコメント、本当にありがとうございます。私の大好きな健人くんを書こうと振り切って書いた作品です。やりすぎたかな?と思った日々もありましたが、大切に思っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 (2021年3月24日 23時) (レス) id: 375937212d (このIDを非表示/違反報告)
あや - はじめてこの作品を読んでから何年経った今でも読みに来ちゃいます笑 ドロ刑の斑目くんで健人くんに落ちた人としては、この作品ほんとに好きで大好きすぎて……こんなに好きな作品を書いて下さってありがとうございます。これからもこの作品を愛し続けます。笑 (2021年3月23日 20時) (レス) id: 9ef94419b6 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - くまさん» コメントありがとうございます。嬉しいです!いつも読ませていただいてます!ただひたすらワンコのような健人くんを書きたくて作りました。くまさんに褒めていただけて、より頑張れます。 (2018年10月5日 9時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - みちさんの書かれるケンティーは最高に可愛くて大好きです!これからも頑張ってください! (2018年10月5日 3時) (レス) id: 88d6776288 (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - はいはいさん» コメントありがとうございます。更新を待っていただけるなんて本当に嬉しいです。これからも短編集のように書いていこうと思ってます。よろしくお願いします。 (2018年9月27日 17時) (レス) id: 85310a9d6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みち | 作成日時:2018年9月9日 11時