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目を潰す話 ページ10

或る人間は、

生まれつき虚弱な身体のせいで呆気なく死んだ。

仕組まれた悪人に捕らわれて残虐に死んだ。

でっちあげの理由で虐げられて報いなく死んだ。

偶然を装ったテロに遭わされ虚しさのなかで死んだ。

不運と見せかけた事故に遭わされ惜しまれつつ死んだ。

無理なこじつけに追い詰められ理不尽に死んだ。

根っから心無い親戚のせいでむごく死んだ。

只の馬鹿な父親のとばっちりを食らって死んだ。

操られた殺人鬼の手によって無力に死んだ。

此方(コッチ)側と提携した人体実験を施されて死んだ。

或る人間は、



そこまで考えて、思考を停止した。
彼奴は人間じゃない。言わば、我等が王様と同族。

しかし、先の十人は愚かで惨めな人間だ。片割れはカゲロウデイズに残されたまま。時折聞こえる悲痛な泣声が面白い。

全て、たった一匹の蛇(俺一人)のせいだとも知らずに。



抑、ヒガンが「新・カゲロウデイズ」という事象を創ったのは、約二年程前のことだった。

ヒガンも馬鹿な野郎だ。親しい女一人のために、あんなに焦燥して必死になって。俺に言われるがまま、能力を駆使して新・カゲロウデイズを創ったのだ。
それからその女を新・カゲロウデイズに放り込み、一命を取留めた。

[後先考えない、勇敢な王様。]

俺は、カゲロウデイズと新・カゲロウデイズを繋いだ。計画はすっかり出来上がっていたし、それを実行するのも然程困難ではなかった。
ヒガンに気付かれないように、静かに、静かに。
息を殺した。
器を保った。
心が弾んだ。

こうすることで、カゲロウデイズのシステムが新・カゲロウデイズにも適用されるのだ。

「……っは、くくッ」

嗚呼、駄目だ。愉快で愉快でもう仕方無い。
最初の計画実行から約二年経った今も繋ぎ目はややぐらついているし、弥神滅楼(俺の器)の身体もボロくなった。

まぁ、これは彼方此方と時間を超越した壮大な計画なのだから、多少の犠牲は気にするまでもない。

「戻ったぜ、王様」

廃墟に戻ると、ヒガンは呑気に眠っていた。馬鹿な上に呑気。これが俺等の王様か。
まるでどっかの人間みたいだ。

「……だァから、ウゼェっての」

身体の内側から、弥神滅楼が叫ぶ。一々面倒な奴だ。
これだから人間は。
壁にもたれ、目を閉じた。この体では休まず動いてはいられない。壊れないだけいいのだが、その点役立たずな身体だ。

仕方無く壁にもたれ、冷たい廃墟で夜闇に堕ちる。その感覚が心地好かった。

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作者名:3代目メカクシ団/企画:キリカゲ | 作者ホームページ:無いのだ!  
作成日時:2019年10月8日 16時

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