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目が気付く話 ページ7

「やっぱり……! 」

イオは、人差し指を立ててつらつらと話し始めた。

「カエデちゃんも僕もヒナノちゃんも、あっちの世界で同一人物と会ってる」

あっちの世界……か。セキと共同製作したカレーを食べながら考える。
終わりのない日々でのことは、ほんの僅かに覚えている。でも、イオ達が言う男性なんて居ただろうか。

いや、あの凄惨な"悲劇"の記憶に押し潰されてしまったのかもしれない。そのくせして、思い出そうとすることさえも細胞が拒む。

「ルイ君?」

隣に座っているヒナノが、「おーい」と眼前で手を振ってきた。嗚呼、記憶を探っているとついぼんやりしてしまって駄目だ。

「……えぁ、何?」
「いや、なんかぼんやりしてたからさ。ねぇ、ルイ君はその人と会った?」

俺はしばらく言葉を失ってしまった。
染みるような痛みが前頭葉を刺激する。

『琉飴……きっとまた会えますよ』

涙ぐんだ声と、寂しそうな笑顔。波が迫り来るみたいに、視界がシャットアウトした。
それは一瞬で収まったものの、頭痛が酷くなってきた気がする。この能力は暴発して困るようなものじゃないけど、このままだと心配をかけてしまう。

「……覚えてない、な」

それだけ告げ、もう一口カレーを頬張った。きっと、こういうのを家庭の味と言うんだろう。

メカクシ団に入る前。能力を宿される少し前。俺はとある孤児院で暮らしていた。
それはとても暖かい場所だと思っていた、けれど__
__やめよう。このカレーが俺にとっての家庭の味だ。そう納得することにした。

「……大丈夫?」

ヒナノの声で、我に返った。

「……大丈夫」

そう告げるも、ヒナノはまだ心配そうに僕を見ていた。僕とヒナノを除いて、滞りなく会話は続いていた。

「ルイ君、誰かに頼ってもいいんだよ」

ヒナノはたった一言そういうと、今一度皆との会話に混ざった。
それに流されて、俺も皆との会話に混ざった。

なんだか、切なさと安心が混ざったような感情に駈られた。人体実験を施されるはずだった、あの夏とよく似た焦燥だ。

「皆が言うあの人のせいで、俺達は、大切な人を失ったのかな」

細切れになった言葉だった。その言葉を発したのは自分なのかと、数秒置いて気付いた。
ざわりと空間が揺らめいた気がした。……的外れだったかな。どうしようか。

「そっか、もしかするとそうかもね! 」

ヒナノだった。いつもどおりだった。頼るってこういうこと、なんだろうか。
俺の安堵は、次へと続いていく。

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作者名:3代目メカクシ団/企画:キリカゲ | 作者ホームページ:無いのだ!  
作成日時:2019年10月8日 16時

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