目が焼ける話 ページ25
寝起き。まだはっきりしない意識の中で、今確かにカゲロウデイズであったことを尋ねられた。
ハル兄はよく覚えていないらしい。正直、僕もほとんど覚えていない。
「ハル兄と一緒で、カゲロウデイズ直前にあったことは覚えてる。けど、その後のことはあんまり……かな」
なんだか申し訳無くなって、思わず下を向いてしまった。
ハル兄の「そっか」と言う声だけが聞こえた。折角一緒に考えようとしてくれていたのに。
「ごめん、なさ」
ぱっと顔を上げて、勢いに任せて謝ろうとした僕は驚愕した。
ハル兄はいつものように笑っていた。キラキラと、アイドルの王道という雰囲気で。
「あはは、おそろだね! にしても、なんでだろうね」
ハル兄は、怒っている訳でも悲しんでいる訳でもなく、ただいつものようにそこにいた。流石アイドル というのもあるが、きっとそれがハル兄の素なのだろう。
たまにユキ姉と重ねてしまって、嬉しいような、寂しいような、そんな感じがする。
「カゲロウデイズの中でのこと、覚えてる人と覚えてない人がいるらしいんだ」
ハル兄の声ではっとした。そうだ、このままハル兄に会話のドッジボールをさせる訳にはいかない……
「そうなんだ……なんでだろ。例えば、誰が覚えてるの?」
「えーっと……確かセオさんは前、覚えてるって言ってた気がするな」
二人揃って考える。セオさんは団長だけど、団長だから覚えているという訳じゃないはず。
「他には?」
「ん〜……あぁ、いつかヒナノちゃんも覚えてるって言ってたかも」
セオさんとヒナノ。二人は歳も性格も違うし、何故なのだろう。
僕が覚えているのは、カゲロウデイズに入る瞬間、ブラックホールのようなものが近付いてきて、気付いたらまたそこに倒れていたということだけ。
だから、カゲロウデイズの中でのことはさっぱりなのだけど……
「もしかして、覚えてるのが普通なのかなぁ……僕達だけ記憶が消されてるとか?」
ハル兄はうーんと唸ってから「なるほどね」と頷いた。
「あと、ショックのせいで記憶が飛んじゃったとか?……でもショックは皆同じか」
今度はハル兄が言ったけど、それは本人によって否定されてしまった。
「今度皆にも訊いてみよっか」
「うん……でも、答えてくれるかな」
「それは、無理にとは言わないけど……きっと答えてくれる人もいるよ。仲間だもん」
ハル兄はまた笑った。その笑顔が目に焼き付いた。
僕がメカクシ団の仲間になって、ユキ姉は安心してるのかな……
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作者名:3代目メカクシ団/企画:キリカゲ | 作者ホームページ:無いのだ!
作成日時:2019年10月8日 16時