目に見えない話 ページ19
『だ……誰、ですか?』
『怯えるな。御前に危害を加える気はない』
恐怖と驚愕で上手に発声出来なかった。当時の私の精神は依然として六歳だったからだ。
まぁ、今の私がそんなに大人という訳でもないのですが。
頑張って震えを止めた私に、"その人"は言った。
『此方は、この世界を創った者だ』
『ぅえ、ぇ』
私は純粋に驚いた。世界は誰かが作っているものなのか、そもそも作れるものなのかと。
『今日は御前に蛇を授けに来た』
間を置かずして、彼はきっぱりと言った。声色は明るくも暗くもなかったけれど、なんとなく堅かった。
『へ、蛇……?!』
『害悪な蛇ではない。ただ、御前に適合することを望んでいる__"見切る蛇"だ』
私には理解が追い付かなかった。だがしかし、死ぬ数日前に毒蛇が登場する物語を読んでしまっていたからとにかく困惑していた。
ミキルヘビってなんだろう、毒はないのだろうかと必死に考える。
『恐れるな。この蛇は抹殺の為のものじゃなく、【物事に見切りをつける為】のものだ』
程なくして"その人"の髪がうごめいた。何を言っているのかはよくわからなかったし、今考えてもちゃんとはわからない。
彼の髪の一本が、うねうねと蛇一匹に変貌した。赤目の蛇だ。いかにも毒がありそうな風に、当時の私には映っていた。
『ひッ……!!』
私が恐怖し硬直している間に、その蛇はするすると真っ暗な地を這い、私の周りを一周した。
そして、気付けば
『あなたは……目を、遊ばせる?』
宿されていた。
『嗚呼、それこそ此方の真名かも知れないな。
……託そう。これからは見切れ、対峙する者達の善悪を』
私はまだ混乱していたけれど、何処か受け入れてしまっていた。それが"その人"の能力のせいなのかは、今でもよくわからない。
『すまない、帰してやれず』
質問したいことは色々あったのだけど、"その人"は本当に申し訳無さそうで、これ以上責めるのは子供心に可哀想だと思った。
"その人"は行ってしまっていた。次に意識が冴えた時、彼はもうそこにいなかった。
何度思い出しても不思議な気持ちになる。
彼はいかにしてこの世界を創ったのか、何故創ったのか、この蛇と能力はなんなのか、等々。
今でも問いたいけれど、あれ以降、"あの人"は一度も現れなかった。
だから私は考える。思考を深める。
考えていれば、いつか"あの人"と琉飴がどこかで結び付く気がしていた。
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作者名:3代目メカクシ団/企画:キリカゲ | 作者ホームページ:無いのだ!
作成日時:2019年10月8日 16時