3代目メカクシ団は夏を変えろ ll (ページ17)

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目を意識する話ページ17

客観的に考えても、「目を遮る」はとても不思議な力だ。

それはそれはシンプルに、嫌なことを忘れられるのだ。けれど、なんと身体への悪影響はない。
何のデメリットもなく、この空間から意識だけでも逃げることが出来るのだ。

この力を使うととても楽になる。嫌な記憶をなくして、いい記憶ばかりが頭に残るのだ。
イズミと遊んだり、
イズミと美味しいものを食べたり、
イズミと部屋の隅っこでこそこそ話をしたり……

そこまで多くはないけど、いい記憶(主にイズミのこと)で頭がいっぱいになる。
だからと言って、悪いクスリみたいに感覚が狂ってしまうわけじゃない。ちゃんと自我を持ったままで楽しい気持ちになれるのだ。

＿＿ただ、デメリットではないけれど、この力を利用するにあたって感じる違和感が一つだけある。
それは、目がとても熱くなることだ。まるで……泣いている時みたいに。

勿論、私はこの力をすごいものだと思っている。けれど、使うのはあまり得意じゃない。
それは、私は泣くのが苦手だからだ。息が詰まって、苦しく物悲しくなってしまうからだ。

願わくば、しっかりした姉でいたい。それが私の望みだった。
そうしてイズミを守って(過保護にならない程度に)、たまには意見しあって(喧嘩にならない程度に)、誰より信用し合える姉妹でいたかった。

まぁ、それは思うようには叶わなかったのだけれど。
だから、せめて一つだけは姉として＿＿

『イズミ、今どうしてる？』
私にはそれがわからない。イズミが今何をしているのか。そして何をされているのかさえ。
ただわかっているのは、私ばかりが逃げていてはいけないということ。だから、私は「目を遮る」を頻繁には使わないことにしている。

イズミは優しい子だから、きっと自分から命を絶とうとはしない。理不尽にもじっと耐えているはずだ。

だから、せめて一つだけは姉として、場所は違えど一緒に歩んでいたい。

『……よし！』

私は二回、自分の両頬を叩いた。
歩かなきゃと足が言う。探さなきゃと脳が言う。きっと、イズミは笑っている。
だから私は、笑って進むことにしているのだ。