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目が合う話 ページ16

「愛美っ」

(カエデ)ちゃんの幻覚を見ている愛美は、やけに綺麗な表情をする。でも__それと同時に、今にも狂ってしまいそうな雰囲気をも漂わせる。
だから、私が呼び戻してるんだ。愛美を「正しい道」に。

「嗚呼……ごめんね。」

愛美は楓ちゃんの幻覚を消して微笑んだけど、それはなんだかやっつけのようにも見えた。

愛美は五歳の頃にも一度此処に来たことがあるのだと、最近教えてもらった。
多分、非凡な私達は事実から目を逸らすことが出来ない。

「愛美は、中一で此処に来たんだよね。」
「……そう、だけど。」

愛美は、ちょっと不思議そうな、ちょっと寂しそうな表情で頷いた。
私は愛美の隣に体育座りをして、ぎゅっと膝を抱えた。自分を守っているみたいで落ち着きそうだったから。

「そっかー、私は中二だったっけなぁ。」

愛美はすっかり不思議そうに「それは私にはわからないけど」と言った。
私は慌てて「そうだよね」と笑った。此処からじゃ、あっちの時間の流れはわからないのだ。

「……楓ちゃん元気かな。って、私はそんなに話したことないんだけどね!」
「……そうね。」

愛美と一緒に亡くなったのは、私も同じ中学校だった青葉楓ちゃん。
度々挨拶はしていたけど、ちゃんと話したことはなかった。

「ま、きっと元気だよね!愛美が助けたんだから。」

私がこうして明るくいられるのは、愛美と話している時だけ……此処でも出逢えて本当に良かったと思っている。

「……そうよね、……ねぇ。」
「何?」

「……あなただって、ユリちゃんのことが心配なのに……私のことまで、心配ありがと。」

愛美はちょっとだけ頬を赤くしていた。
友達が一人しかいない此処でツンツンされると困るから、あまりまじまじとは見ないでおく。

「ううん。此方こそだよ。」

いてくれるだけで有難い。愛美はそんな存在だ。
__それに、

「私はもう『ユリは大丈夫!』って信じ切ることにしたから。」

私が笑うと、愛美も笑った。
目が合った時、愛美の目は赤く染まっていた。不思議だけど綺麗な色だ。

ユリも、この「赤色」の仲間になれてたらいいな。

目を意識する話→←目が慣れない話



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作者名:3代目メカクシ団/企画:キリカゲ | 作者ホームページ:無いのだ!  
作成日時:2019年10月8日 16時

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