3代目メカクシ団は夏を変えろ ll (ページ15)

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目が慣れない話ページ15

「ハルヒ、今日の演技も良かったよ! 」

心からそう告げ、アクセルを踏んだ。
PM6：30。ハルヒの仕事終わり、彼を家に送るまでが、私の役目だ。

「ありがとう! ……いい作品に仕上がるといいなぁ」

今日収録していたドラマでは準主役をシリアスに演じていたのに、カメラが止まると途端に表情が柔らかくなる。
最高のアイドルであり、俳優であり、私の……ううん、皆の宝だ。

「仕上がるよ。ハルヒが準主役だしね」

きっと、いい作品になる。「まだ準じゃーん」と、しかし嬉しそうに笑うハルヒをバックミラーで眺めながら、赤信号に従う。

「まぁ、充分有難いんだけどさ」
「そうだね」

帰路の他愛ない会話は、私達を"友達である"と錯覚させる。
いや、もしかしたら本当にハルヒとは"アイドルとマネージャー"でありながら"友達"でもあるのかもしれない。

「やっぱり、努力って報われるものだね」

学生時代からの努力を思い出し、ふとそう口にする。
ハルヒが何かを答える前に、信号は青に変わった。それに従ってアクセルを踏んだ、その時。

「そうだね……って可愛ちゃん、前、前っ……!!」
「な、んでッ……!!??」

鉄柱が、私達に襲いかかってくる最中。
私は咄嗟に、後部座席のハルヒにビジネスバッグを投げた。そんなもので足りるはずないけど、少しでも身を守って欲しかった。

だって、ハルヒは＿＿

皆の宝なのだから。

フッと意識が冴えた、真っ暗な空間。
何回同じ夢を見ても、この夢だけは慣れないなぁ。

あの事故の後、気付いたら此処にいたんだっけ。記憶が曖昧だ。
何だっただろう。此処に来る前、私が人生で最後に見たものは……、

……そうだ。ブラックホールみたいな、漠然とした黒い黒い空間。
それが、多分、此処の入口だ。

徐に蹲り、深呼吸をする。ハルヒとの思い出の中で、これだけが嫌なものだ。
きっと大丈夫。ハルヒは生きている。
そう信じることだけが、私の救いなの。

だって、努力は報われるものだから。