水無月 ページ7
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あれから何日も経った。
私はずっと先生の横顔が脳裏から離れず、
もやもやしている。
先生が私に見せたあの意味深な笑みも、
特徴的な関西弁で話す声も、
思い出しただけで胸が苦しくなる。
私と結ばれる訳はないのに。一瞬でいい。
その胸に抱きしめられたい。
いつの間にかそんなことまで
思ってしまっている自分がいて。
私の中に私の知らない私がいる。
もやもやした気持ちを引き摺りつつ受けた講義のあと、
最近通いだしたカフェバーに立ち寄ると、
京香さんがカウンターで赤ワインを口に運んでいた。
京「あ、Aちゃんだ〜今日も大学？お疲れ様〜」
『京香さんもお疲れ様です。私白ワインで』
はーい、と店長の流星さんがワインセラーを開けた。
京「じゃ、乾杯」
ふたりでグラスを軽く傾ける。
私たちはよくこのカフェバーに入り浸る常連同士で、
京香さんの方から声をかけてきてくれたのを
皮切りに友人になった。
京「あ、そうだ今度の花組公演に一緒に行かない？」
意外な共通点で私たちはミュージカルが好きで
何度か一緒に観劇することもあった。
『うーん。今回はパスさせてください。
せっかくお誘いいただいたのに。すみません』
京「浮かない顔してるわねぇ、何か悩んでるのね」
『やっぱり京香さんにはわかっちゃいますか？』
京「だって、Aちゃんが大好きなお芝居断るなんて、中々ないもの」
京香さんが笑う。
『悩んでるというか、答えは決まってるのにもやもやしてるというか』
京「恋だな。恋の悩みでしょ」
流「間違いないな〜」
いつの間にか流星さんまで私たちに混ざっている。
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作者名：みっこ | 作成日時：2021年12月4日 0時
