贈り物には雨傘を。〔紫〕 (ページ34)

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『....あの、すみません』

「ん？....あ、この前の」

手に持っている傘を見て、
判断したんだと思う。

『先日はありがとうございました。
これお返しに来ました』

先生は読んでいた本から目を離さなかった。

「... その傘、軽いけどしっかりしてなかったですか？使いやすいんですよ」

『 ... ？はい、使いやすかったです』

「よかったらそれ使ってください、
実はそれサラピンだった ...
あ、新品だったんですよ。

無くしたと思って新しく買うたんですけど、
使う前に無くしたやつが見つかって。
やからよかったら使ったってください。
入学祝いやと思って」

あのときから呪いはかけられてたのかもしれない、と
今では思う。

思い出を一人考察しながら歩いていると、
目的地に着いた。

一年振りにここへ足を運んだと思う。

先生も誘ったんだけど
今日は仕事が長引きそうだからと
またの機会にしようってことになった。

カランコロン。

流「いらっしゃいま ..... あ！Aちゃんやん！
もう！あの時バッタリ会うてから
めっきり来おへんくて！
心配したんやからな！」

流星さんが半にやけで言った。

あの頃と何ら変わりなかった。
京香さんもいた。

京「わ〜〜！よかった、元気にしてたのね」

京香さんの隣に座ると、
京香さんはなんだか痩せていた。

『最近何かありました ... ？』

京「そうねえ ...
ちょっと前にパートナーと別れて
精神的にダメージ負っちゃって。

勿論、私が彼を苦しめてしまったのもあるけれど ...

ほかに好きな人がいたんだと思うの。
... 傘の呪いは嘘だった。

傘を人に贈ると
忘れられなくなるはずなんだけどな」

『そう...だったんですね』

うまく表情を作れなかった。

薬指につけている指輪をそっと隠し
携帯を確認して、

ごめんなさい、急用ができてしまったので
改めてお邪魔しますね、と言ってお店から出た。

あれから流星さんのお店には行かなくなった。

fin.

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