贈り物には雨傘を。〔紫〕 (ページ29)

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弥生ページ29

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小「うーわ。Aも春も
えらいべっぴんやな！」

春「もー望ったら、大げさだよ～」

まだちょっと寒さの残る3月。

華やかな着物に身を包み、
卒業証書を手にすると、
じわじわと実感が湧いてくる。

小「もう会われへんと思ったら寂しいな〜」

『そんなん言って。またすぐ集まれるよ』

春「のんちゃんは寂しがりね」

『だって楽しかったんやもん』

腕に巻かれた時計の針は約束の時間を示している。

濵田先生に研究室へ呼ばれていたのだ。

『ごめん！濵田先生に呼ばれてるから
ちょっと行ってくるね！先に帰ってていいよ！
また後でね』

春「うん！17時にね！待ってるよー！」

小「気いつけてな！転ぶなや〜！」

手を振る二人を後ろに駆けていった。

誰もいない廊下は明るいのに深夜のような静けさ。

終電ギリギリになるまで研究室いたなあ。
濵田先生にばったり会って、
車で送ってもらったっけ。

随分昔のように感じる。

そして、研究室の前に。
ノブを触れている手が震える。

「はよ、入れや」

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