人魚姫3 (ページ7)

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青からオレンジへと色を変えてゆく空の下、急に静かになったベクが、何も言わずに私の手を引きどんどん前へ進んでいく。

『どこいくの…？』

不安になって投げかけた言葉を、ベクは背中で跳ね返しながら

「ないしょ」

と、一瞬私の方へ振り返って、優しく微笑んだ。

だんだんと色が無くなってゆく景色に、夕方はもうとっくに過ぎて消えてしまったのだと気づかされる。

「どう？綺麗でしょ」

ベクがやっと喋ったのは、Nソウルタワーの展望台に着いてから。

そこから見渡せる夜景は、見たことないくらい綺麗だった。

澄んだ空気の中に、幻想的な光の海が広がっていて。

不思議なくらい、輝いていた。

『すごいきれい…』

思わず溢れた言葉。

ベクは嬉しそうにふっと笑った。

「あ、ほら、あそこ星型に見えるでしょ？」

私の目の前をベクの長い腕が通り過ぎて、そこそこ！と、光の線が描く大きな星を指さす。

『え？あー、本当だ！見える！』

すごいね、綺麗だね、って2人で言い合いながら眺めるこの景色は、すごく特別なように思えた。