人魚姫3 (ページ25)

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苦しくなる。

ドッドッドッって、全身にあったかい血液が流れてゆくのが分かる。

胸が、張り裂けそうにきつく締め付けられるのが分かる。

呼吸を整えながら少しずつ視線を上げる。

「…すき、」

ベクの声が、しっかりと聞こえた。

『っ、え……』

ちゃんと聞こえすぎて、逆になんて言われたのか分からなくなった。

『いま、なんて？』

頭の中がすっかり空っぽの腑抜けになってしまった。

状況が、掴めないよ、

「2回言わすのはえっち」

けど、そう言ったベクの声がいつもと同じふざけて遊ぶ男の子みたいなあどけなさで、私はほんの少し安心する。

『だって、今なんか言ったから…』

「すき」

『えっ！？』

「ねぇもう何回言わすの？イジワルしてる？」

『え、ううん、違う。待って、えっと…』

「だーかーらー！」

ベクは繋いだ手をブンブン振り回すと、「ちゃんと聞いてなかったのぉ～？」って私の顔を覗き込こんだ。

鼓動が、ビクンと弾む。

「好きなんだって、Aのこと。本気で好き。だから俺と付き合って欲しい」

こんなに短時間で、しかも同じ人から “ 好き ”って言葉を言われるなんて。

こんなこと、多分人生で味わうのはこれが最初で最後だ。たぶん、

『ほ…、んとに？』

言葉に詰まって、掠れた声で聞き返すのがやっとだった。

「うん、本当に。Aは？俺のこと好き？」

『え、』

私は…？私は、私は、

なんて答えればいいんだろう。

そもそも、ベクは何を聞いているんだろう。

好きって。

好きって、なに？