人魚姫3 (ページ21)

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夕刻、スマホの画面に目に映る自分の顔が、こんなにも歪んで見えたのは初めてだった。

18時16分。

薄暗くなっていく辺りの景色に、桜の色だけがやけにくっきり浮き出て、なんでか私は、その不気味さに身震いした。

いつの間に光が灯っていたのか、桜の木に飾られた色とりどりの提灯達が律儀に並んでいる。

その下をゆく、楽しそうな人、ひと、

あぁ、ギョンスさん早く来ないかな。

待ち合わせの時間は、もうとっくに過ぎている。

かれこれ4時間以上はずっとここで待っている。

もうそろそろ、私は気づいた方がいいのかもしれない。

彼は、ここには来ない

って。気づいてたけど、気づかないフリしてた。

人の数がだんだんと増えて、大勢の楽しそうな声が聞こえてきた。

目の前を通り過ぎてゆく幸せそうな笑顔を見るたび、なぜだか私の胸は苦しいくらいに締め付けられるのだ。

あぁ、ヤダな。

また、居なくなっちゃった。

本当は、待ちたくなんかない。

待ってるのは辛いんだ。待たされるのは、イヤなの。

だから、大切なんてつくりたくなかった。

つくりたくなかったのに…

いつから彼は、私の中で “ 大切なひと ”になってたんだろう。

もう立ってられない。

足元が不安定で。俯いた地面は、異様なほど歪曲していた。

耐えられなくなって、咄嗟にしゃがみこむ。

蹲ることしか、もうできない。

なにも、考えたくない。

もう、なにも…

私は、

っ、わたしは…

失いたくなくて、裏切られたくなくて。

ねぇ。

なんで、来てくれないんですか？

私、いつまで待てばいいですか？

いつになったら、あなたはここへ来ますか？

あなたは…今、どこにいますか…？