人魚姫3 (ページ3)

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最近、時間が過ぎるのが早く感じる。

あっという間に今日が終わって、スマホの画面を覗くと、もう明日が来てる。

それなのに、私は…

この2日間、ずっと頭の中にあったのはギョンスさんのこと。

何をしてても、必ず彼のことを思い出す。

キスされそうなほど近くにあった体温を、私は忘れられずにいる。

…って、やめやめやめ。

今日はベクとのデートなんだから。

楽しもう、絶対に。

それでもふと、頭の隅にギョンスさんの顔が浮かんでくるから。私はそれを消し去るように、急いで待ち合わせ場所の駅に向かった。

待ち合わせした時間まであと8分。

なんとか間に合った。

急ぎ足で歩いて来たから、少し息が上がってる。

「A？」

瞬間、後ろの方で名前を呼ばれ、私はその聞き馴染みのある声に振り返った。

『…だれ？』

でも、目の前にいたのは、深く被った黒いキャップと大きめのマスクのせいで顔のほとんどが隠れてしまった、まるで変質者のような人。というか、本当に変質者かも。

「俺」

いや、こわいよ。

声は明らかにベクのものだけど、格好が変。何というか、怖い。

『ベク…？』

「うん。あ、ごめん」

私の視線に気づいたのか、ベクが急いでマスクを取る。

「俺でしょ？」

そうして、無邪気な笑顔で私を見つめた。

「んじゃ、いこ」

言って、ベクが私の手を掴む。

引き寄せられるように繋がれた手が、すごく熱い。

少し前を歩くベクは、「はぐれないでね」と私に振り向いて言ったけど、こんなに力強く握られたら、はぐれようにもはぐれられないよ。

心臓が、どうしようもなく痛かった。

そわそわして、なんだか落ち着かない。

私はただ、目の前の意外なほど広くてたくましい背中をじっと見つめた。