人魚姫3 (ページ19)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:12,507 hit

118 ページ19

・

あれから何度スマホの画面を覗いたのだろう。

14時20分。

それでもまだ、このスマホは真っ暗な画面しか映さない。

時間にルーズそうに見えないギョンスさんだからこそ、20分の遅刻で連絡がないのはなんだか胸騒ぎがした。

事故…とか？

いやいや、やめよう。

そういうマイナスなこと考え出すと本当になりそうで怖い。

今はただ、待つことしかできない。

事故や事件に巻き込まれてないことを祈ろ…

ーーーーーーーーー
・k

こんなに遅くなるなんて思わなかった。

映画の撮影が予定よりも40分近くおしてしまった。けれどそれは、同時に俺のせいでもあった。

まだまだ未熟な俺の演技は、誰が見ても周りの演者達の足枷でしかなかった。

悔しい。

その想いに押しつぶされそうになりながら、何テイクも撮り直しを願い出て、何度も頭を下げた。

それがまた、とてつもなく悔しかった。

控え室に戻り、俺はそそくさと着替えを始めた。
横でマネージャーが何かを喋っていたが今はそれどころではない。

突発的に目にした腕時計の針は、明らかに14時を過ぎていた。

やばっ、

自分から誘っておいて、しかも時間まで指定しておきながら遅刻とか。

あり得ないだろ、それは。

とっさにデニムのポケットを探り、スマホを取り出そうとする…が、

「え、…？」

ない。

両サイドのポケットも、後ろも、ない。

ない、スマホがない。

手にしたリュックをテーブルに置き、その中身を広げてみるけど、

ないないない、

「どうしました？」

眉をひそめ首を傾げたマネージャーが、怪訝そうな声で尋ねる。

「スマホ、どっかで落としたかも」

確かに朝まではあった。

あったはずなんだけど…どこで落とした？