人魚姫3 (ページ18)

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忘れよう。取り敢えず、明日はちゃんと楽しもう。

心の中で何度か呟いたあと、

「おーい、とっくに昼休憩終わってますよ」

いつの間にそこに居たのか、コウさんが私の目の前で今まさにお弁当を広げようとしているところだった。

『え、うそ』

「ほんと」

咄嗟に腕時計を確認する。

やば、10分前にお昼休憩終わってた。

『あ、ほんとだ…』

「あほ、はやく働け若者」

『はーぁい…って、あれ？今日、午後からキムさんと仕事じゃないの？』

「あれ、明日になったわ」

『そっか』

「てか、はよ行け。働け」

『はいはいはーい』

コウさんは何だか、最近とてもイキイキして見える。キムさんとの仕事が上手くいってる証拠だろうか。

『じゃあ怒られる前に仕事してきまーす』

言って、私はペットボトルのお茶を飲み干すと急ぐように休憩室を出た。

「…っ、あのさ、」

だからあの時のコウさんの声は、私の背中にすら掠ることなく、閉まってゆくドアに跳ね返された。

「ったく、逃げ足だけは早ぇーのな」

ねぇコウさん。

私ね、今でも考えてしまう。

あの日、コウさんの呼びかけに私が足を止めていたら…

そしたら、こんな辛い日々を送らなくても済んだのかなって。

そんなことばっかり。

そんなくだらないことばかり考えちゃうよ。

私が、すごく弱い人間だから。

もう戻れないのに。

進んでゆく時間の波に、私だけが乗り遅れてる気がするの。

今もまだ、私の全ては、あの頃のままだから…、、、