人魚姫3 (ページ17)

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ピコンッ

それはお昼休憩中。

音を消していたはずのスマホが、びっくりするほど大きな着信音で存在をアピールしてきた。

誰からだろう。

画面を覗くと、“ ギョンスさん ”の文字。

なんだか緊張してしまって、よく分からないけど背筋がピンと伸びた。

そういえば、今朝ギョンスさんから〈明日の桜祭り、楽しみですね〉って来てたんだった。《そうですね》なんて、素っ気ない返信しかできなかったけど、それの返事だろうか。

なにかな。

もう一度ちゃんと椅子に座りなおすと、私は彼からのメッセージを開く。

〈すみません。明日の午前中に仕事が入ったので、待ち合わせ14時でも大丈夫ですか？〉

それは、ギョンスさんらしい文だった。

笑っちゃうほどかしこまっている。

《大丈夫です！お仕事大変ですね。急がなくていいので、気をつけて来てください。》

…なんか、私もちょっと堅苦しいかな？

まぁ、いっか。送信っと。

あぁなんか、今すごく胸がドキドキしてる。

明日、どんな顔でギョンスさんに会えばいいんだろう。

ふと、数日前のあの光景が頭をよぎった。

無意識に熱を持ちはじめた頬が、すごくあつい。

あんな至近距離で、誰かの体温を感じたのは初めてだった。

微かに聴こえた彼の瞬きの音も、

頬に伝わる指先の温度も、

私はまだ、鮮明に覚えている。

あんなの、絶対に忘れられないよ…

『すぅ～～ぅ、』

名前の知らない苦しさがふっと喉元まで湧き上がってきて。

私は、それをカラダのずっと奥の、奥の方へと押し込むように息を吸った。