人魚姫3 (ページ15)

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「…はやく、着替えてね。みんな、もうご飯食べてるから、」

ほら、お前はいつもそうだよ。

ギョンス、お前何見てたの？

俺の机の上。

そこにはさ、女物の手帳があって。

変だと思わないの？

なんで、何も聞かないし何も言わないんだよ。

そっちの方がよっぽど変だよ。

…へんだよ、ギョンス。

俺も変だけどさ。

お前はもっと変だ、

窓から吹き込んだ風は、不思議ともう冷たくなくて。

気持ち悪いほどの生暖かい外の空気がカーテンをふわりと揺らし、ほんの少しだけそれに目を奪われ窓を閉めた隙。

その一瞬で、俺の視界からさっきまでそこに居たはずの背中が消えた。

…ガチャ

静かな部屋に、扉の閉まる音だけがやけに大きく響いた。

本当に静かだった。

つい何分か前に居たギョンスの息遣いすら、今はもう何もかも消えて無くなってしまった。

なんだかもう、ギョンスはこの部屋に来ないような気がした。

そう思えてならなかった。

きっとギョンスは、2度とここへは入って来ない。

…、こわいな。

明日がこわい。

明日の朝、俺はひとりで起きれるだろうか。

ベッドから立ち上がり、俺は机に向かうと、そっと彼女の手帳を撫でた。

ふと、閉めたはずの窓からふわり春の青臭い匂いが流れ込んできた。

…あぁ、やっと今気づいてしまった。

もう揺れ動くことのないカーテンを見つめ、俺はひとり、この部屋に取り残されたのだと悟った。