人魚姫3 (ページ13)

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目を覚ますと、隣のシートはすでに冷たく、ただ抜け殻のように置かれた彼女の手帳だけがそこにあった。

いつの間にか消えていたAの体温。

触れるようにそっと伸ばした手を、俺は咄嗟にひっこめる。

「忘れもの…」

呟いて振り向いた窓の外、彼女の名前を呼ぼうとして吸った息を、俺は冷たい暗闇の中で飲み込んだ。

結局、どうしようか悩んだ挙句に俺は彼女の手帳を持ったまま家に帰り、そのままダイブしたベッドの中でAに連絡することもなく眠ってしまった。

翌日の朝、その日は仕事が午後からなのを思い出し、一度起きた体をまた布団の中に潜り込ませ、二度寝しようと伸ばした目覚まし時計に、

「おはよ、」

と言う柔らかい声が上の方でした。

「…ん、」

誰かよく分からなかったけど、とりあえず返事だけしとく。

「朝ごはん作ったけど食べる？」

「んあーギョンスか、はよ」

その声がギョンスだと分かり、俺は布団から顔を出してまだ眠い目をこすった。

「早くおきなよ、ご飯冷めちゃうよ？」

ギョンスはいつもこうして俺のことを起こしに来てくれる。けどさ、今日は午後から仕事なんだし、気遣っていつもより遅い時間に起こそうとか思わないわけ？

まぁ、いいけどさ。

そういうところがお前らしいよ…

睡魔がのしかかる重い背中をやっとの思いで布団から引き離すと、俺は身体を起こした。