人魚姫2 (ページ21)

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あと、20分もある…

待ち合わせ場所の駅に着いたのは、10時40分。

昨日の夜は胸の鼓動がうるさくて、全然寝つけなかったから、目の下にクマができてないか心配だった。

ずっと、この日が来るのが楽しみで…

ビョン・ベクヒョンと、彼と、2人きりで出かけるなんて夢みたい。

…ほんと、夢みたいで、怖いよ

「…あれ、俺もしかして遅刻？」

履きなれないヒールの先を眺めていると、頭上で彼の声がした。

『っえ、あ、いや、その…』

勢いよく顔をあげたら、想像以上に近い距離で彼が笑っていて。

驚いた私の鼓動が、途端に跳ね上がる。

「ふふっ、早すぎだし、焦りすぎ(笑)」

そう言った彼は、いつもの無邪気な笑顔を向けると、私の右手を掴んでびっくりするくらい自然に、その細い指を絡めてきた。

『っ、』

何も言えなかった。

けど、その手を拒むこともしなかった。

したくなかった。

むしろこのまま、彼のほんの少し冷たい指先の温度を感じていたいと思った。

この手を、離して欲しくない。

少し前を歩く彼の背中を見上げながら、私はそんな事を考えていた。

彼氏でもない、友達とも言えるの分からない、出逢ってからまだ数ヶ月も経ってない何も知らないこの男のことを、私はどうしようもなく愛おしいと思ってしまっている。

この胸の痛みがなんなのか、激しく高鳴るこの鼓動の意味…

私はそっと、彼の甘く揺れる栗色の髪を見つめながらそのわけを探すみたいにぎゅっと、彼の左手を握り返した。