人魚姫2 (ページ20)

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「だって、お客さんいつも来てくれるし。あ、それにAさんの知り合いでしょ？」

「あー、いや、でも、」

「気にしないでください。だいたい、律儀に延滞料払う客なんていないんすよ、この店。」

彼は、眩しいくらいに無邪気に笑った。

「店長がゆるすぎんだよなぁ…って、これ悪口じゃないですからね！店長には秘密で！」

「うん、わかった(笑)」

つられて、俺まで笑ってしまう。

「そいえば、今日は休みなんですよ、Aさん。」

「え…」

「あ、違いました？会いに来たのかと思って。最近、会えてなかったみたいだったから」

「あ、、えっと、」

彼は、、彼には、どこまで見透かされてるんだろう。

「この頃Aさん全然元気なかったし…って、なんかすいません、でしゃばっちゃって」

「あ、いや、」

元気、なかったんだ。

いや、でもそれは俺がこの店に行けてなかったこととは関係ないか。

「あー、でもそういえば明日、出かけるとか言ってたっけな。なんか、誰かとデートでもするんすかね？(笑)」

帰り際、彼が言ったその言葉を俺はよく理解できていなかった。

ううん、逆か。

理解できるほど明確な答えが、俺の中にあって。それを俺は、気づかないように硬く、何があっても見つけ出さないようにきつく、胸の底に押し込んだんだ。

「ありがとーございましたぁー」

彼の声に押され、俺は飛び出すように店を出た。

怖かった。

目の前の、俺のすぐ前に立つ男が、ふいに知ってる人と重なって。

その無邪気な幼い顔がずっと、ずっと、

俺には、

お前にしか見えなかったんだ、ベッキョナ…