人魚姫2 (ページ19)

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扉を開けたら、いつもみたいに

『いらっしゃいませ』

っていう、丸くて甘い、優しい声がするものだと思っていた。

思い込みは、怖いな。

「しゃーせーぇ」

俺を出迎えた声は、彼女とは違う、男の子の声。

店の奥にいるんだろうか。

それとも、休憩時間だろうか。

いや、今日は…

「…休みですよ」

扉の前に立ち止まったままの俺に、誰かの言葉が痛く刺さった。

「っあ、、」

顔を向けて、レジに立つ少年とばっちり視線があった。

「返却ですよね、どうぞ」

彼はふっと笑って、眉を一瞬動かしてみせた。

「…はい、」

少し戸惑って、彼の前に進む。

似てるな、なんか。

「すみません、返すの遅れちゃって…」

ずっと前から返しに行こうと思っていたDVD。でもその返却期限は、もうとっくに過ぎていた。

申し訳ないな。

「あ、延滞料は…」

多分、軽く5日は経ったと思う。
だからえっと、どのくらいかかるのだろう。

普段、延滞なんかしないから考えたこともなかった。

「いいですよ、このくらい」

でも聞こえたのは、彼の不思議なくらい幼く響く優しい声。